女勇者を寝取られた僕は全てを壊して本当に愛する人の元にいく

石のやっさん

第1話  本文

僕の名前は トーゴ、両親はいない。


何故いないかはあえて言わないけど、長い間旅をしてきた。


僕の仕事は、聖剣の守り人をしている。


勇者が現れるまで、聖剣を守る...それだけの仕事。


これは案外、この国の多くの人が知っている。


今現在は魔物や魔族は居るものの魔王は復活してないし、勇者も現れないから、ただ、聖剣を持っているだけの子供だ。


流れ、流れてこのカセリ村に着いた時に、「子供の一人旅は危ないから」と謂れそのまま住み着いた。


そして、今現在は村の外れの家に住んでいる。


仕事は村の手伝い。


それだけ、でここの村は裕福なのか子供一人が普通に暮らせる。


近くにはハッシュさんの家があり、ここの家にはカヤという少女が住んでいる。


カヤはこんな田舎に住んでいるのが可笑しなくらい位に洗練された美少女だ。


そして、一番僕の仲の良い人間だ。


「トーゴ君、おはよう...今日も可愛いね!」


「あのさ..可愛いって言うならカヤの方が可愛いよね...それに僕は男の子だから...可愛いっていうよりカッコ良いって言われたいんだけど...」


「そう、じゃぁトーゴ君は可愛くてカッコ良い...それで良い」


「うん、それなら良いかな..」


小さい頃から一緒に居るのと、同じ位の友達が居ないから...いつかは結婚するのかな...そう思っていた。


カヤはたまに僕の持っている剣を見たがった。


余り抜いて良い物では無いんだけど...惚れた弱みで仕方ない。


「仕方ないな..特別だよ」


僕はそう言って剣を抜く。


「この剣...凄く綺麗だね、宝石もついているし、刀身も青くて綺麗...」


「そうかな、僕にとってはカヤの方が綺麗だと思うよ」


「うん、ありがとう...所で、その剣、何でトーゴ君しか抜けないの?」


「抜けない秘密は、剣じゃなく、この鞘に秘密があるんだ...この鞘が守り人に反応して抜けるんだよ」


「そうなんだ..ねぇトーゴ君、それって教えて良かったの?」


「本当は内緒なんだけどね!」


「カヤが特別だって事だよね..だったらトーゴ君、あたしと大きくなったら結婚してくれる?」


「大きくなってもカヤが僕を好きだったらね」


「トーゴ君の意地悪...カヤは絶対に好きなままだよ」


《カヤ...人は変わるんだよ》



カヤはその後も何時も僕の傍に居た。


僕もいつの日かカヤと結婚するのかなそう思うようになった。


14歳になった。


14歳になるとこの世界では、教会でジョブが貰える。


「あたし、明日の儀式が楽しみなんだ」


「そうなんだ...僕は守り人だから...儀式は受けないから..」


「そうだったね...だけど、あたしは何のジョブを貰えるのかな? 刺繡が得意だからお針子になるのかな」


「そうだね、だけど世界が平和だから、なんだって良いんじゃないかな」


「そうだね、ねぇトーゴ君、あたしもジョブを貰ったら大人だよ...婚約して欲しいな」


「僕は守り人だから、役立たずだけど良いのかな?」


「うん、良いよ...トーゴ君なら..違うトーゴ君だから良いんだよ」


「そう、じゃぁ解かった...カヤが本当に僕が好きなら...うん、結婚しようか」


「うん」


カヤの顔が真っ赤だ。




そして、ジョブの儀式が始まった。


小さな村だから、カヤを含んで14歳は四人。


1人1人にジョブが与えられていた。


そしてカヤの番になった。


カヤのジョブは...


「凄い、初めて見たぞ...」


カヤは心配そうな顔で司祭様を見た。


「どんなジョブなんですか? まさか遊女とか娼婦とか悪いジョブなんですか?」


この世界では稀にそのような軽蔑されるジョブが出る時もあるのだ。


だが、それだって悪いばかりでなく、ちゃんと加護はある...まぁ言いにくい加護だけど。


「ちがう..カヤ..いやカヤ様...貴方のジョブは勇者だ」


《やっぱり...復活したんだな》


勇者のジョブが村から産まれたので歓声が沸いた。


そしてカヤは驚いた顔をしていた。


その日の夜小さな宴が行われた。


カヤはあちこち引き回されていた。


夜、遅くなった後、カヤが僕の元に訪れた。


「トーゴ君、あたし、明日から王都に行かなくちゃいけないんだって」


「そうなんだ、だったら僕も守り人だから行くのかな?」


「なんでか解らないんだけど...トーゴ君はまだ来ないで良いみたい」


《まぁ、カヤが一人前の勇者になるまで数年は掛かるけど...聖剣はまだ要らないのかな》


「そう、だったら僕がカヤの傍に行くのは先なんだね...」


「あたし、待っているから..立派に勇者になって待っているから...」


「うん、わかった」


「ねぇ、魔王を倒して平和になったら...」


「そこから先は、次に会った時に...」


「トーゴ君の意地悪...解かった...かならず伝えるからね..」


「うん、解かった...楽しみにしている」



それから、カヤは次の日には王都に旅立っていった。


最初はよく手紙がきていた。


僕が貧乏なのが解っているのか返信用のお金も入っていた。


訓練がつらいとか、他愛もない物がつづられていて、最後には必ず「トーゴ愛している」それで終わっていた。


ある時から、カヤの手紙の中に 貴族の息子の剣聖のソードの話と第三王子で賢者のアールの話が入ってきた。 遠征で助けて貰ったとか、王子が凛々しくて知的だとか...だけど、最後にはかならず、トーゴ愛していると書いてあった。


半年がたってカヤからの手紙が届かなくなった。


まぁ彼女は勇者だから、忙しいし、旨くやっているのだろう...僕はそう思っていた。


それから更に半年がたって、僕も王都に呼ばれた。


馬車に揺られて2週間、王都についた。


休む間もなく、僕は王城に呼ばれた。


待合室にて待つように言われた、そこにカヤが来た。


「トーゴ久しぶりですね、聖剣は持ってきたの?」


《トーゴ君って呼んではくれないんだな》


「勿論、持ってきたよ」


「そう...解かったわ」


「何だ、君がトーゴか如何にも平民って顔をしているね..気品の欠片もない」


「貴方は」


「貴方だと...僕は第三王子で賢者のアールだ...お前如き平民が喋って良い相手ではない」


《王族か..確かに名前も告げずに話掛けたら...礼儀になってはない》


「すみません、王子とは知らず、ご無礼を..お許し下さい」


アールは満足そうにひれ伏す僕を見ていた。


「アール、その辺で良いんじゃないか! カヤの幼馴染だし...この後の事を考えたら..少しは温情をかけてもよいだろう」


「ソード、まぁお前がそう言うなら...これ位で良いだろう」


だが、ソードは素早く剣を抜くと斬りつけてきた。


「何だ、この程度か守り人って...こんな物にも反応しないなんてつまらないな」


「剣聖のあなたと比べちゃ可哀想だよ? トーゴごめんね」


何だかな...躱す必要が無いから躱さなかったんだけど。



それから、暫くして、使いの者に付き添われて王の間に向かった。


僕は、片膝をついて声を掛けられるのを待っていた。


「面を上げて良いぞ、守り人」


王の後ろの恰幅の良い老人とっその横の痩せた老人と目が合った。


《懐かしいな》


「はい」


僕は顔をあげた。


その先には カヤとアールとソードがたっていた。


「ご苦労であった、して聖剣は何処に」


思わず、僕は黙ってしまった。


「王様、ここには剣は持ち込めないんで、多分、あそこの衛兵が持っているのがそうでしょう」


ソードが進言していた。


「成るほどの..だったらちゃんと説明せぬか」


「申し訳ございません」


衛兵が剣を持ってくる。


「これが聖剣か...これで守り人は用済みだな」


「そうですか...」僕が答えた瞬間、後ろから魔法が飛んできた。


「待って、早まらないで...まだ駄目!」


「なんだい、カヤまだその田舎者に未練があるのかい?」


「違うわ、愛しているのはアール、貴方だけよ..だけど、その聖剣は守り人しか抜けないのに..もう」


「そうだったのか、済まなかった、カヤ」


「意固地になって抜いてくれなかったらどうするのよ?」


「その時は、手足の一本も切り落とせば、良いんじゃないですか...何だったら僕が」


「ソード、お前は何と物騒な...アールお前も何を考えているのだ、守り人よ余は何も知らなかった...こ奴らには必ず、罰を与えるから、抜いてはくれぬか」


「わかりました...」


僕は、剣を鞘から抜いて...渡した。


「うむ、しかと受け取ったぞ...アール 後は好きにするが良い!」


「罰を与えるのではなかったのですか?」


「そうであったな」


王様は軽くアールの頭を撫でた


「余り悪い事はしちゃいかんぞ」


そして、そのまま席をたった。


「なんじゃ、約束は守っただろうが!」


笑いながら立ち去った。


「テデューク、お前の子孫は腐ってしまったな」


奥の老人に聞こえるように声をかけた。


「貴様、余ではなく、英雄王と言われる、父を馬鹿にするのか?..アール、殺してしまっても構わないぞ」


王は激高して立ち去った。 そしてテデューク達、先王達も立ち去った。


《あの声...どこかで聞いたような気がするが...まぁそら耳かの》



「さぁ父上からの許しが出た...王族への無礼、楽には殺さない」


「あの、カヤ...僕は殺される様な事何かしたのかな...君は僕を愛していたんじゃないのか?」


「ごめんね、あの時はそう思っていたんだけど、村を出て思ったの、貴方位の人なんて幾らでも居るって...到底 王子で賢者のアールにも敵わないし、貴方なんて、そこのソードよりも遙かに下よ..」


「そう、だけどこれはないんじゃないかな? だったら、剣を受取ったら、さよならでよかったんじゃないかな?」


「それじゃ、わたしが困るの..私の初めてはアールに無事奪って貰えたけど、貴方と私が仲良かった事が知れたら、王子と結婚する前に傷物だったなんて風評が出るかもしれないじゃない!」


「そんなの村の人なら皆んな知っている事だろう...」


「あぁ、それだったら親父たちが今頃皆殺しにしている事だろうよ、俺の親父騎士団の隊長だからさ...剣聖で王子の親友の俺の言う事なら何でも聞いてくれるんだ」



「なぁ、カヤ、君は自分の親や、君の故郷の人まで殺すの?」


「わたしは、勇者よ..そして無事に魔王を倒した後はアールと結婚するの...そしてこの国の王妃になるわ...その為なら親や故郷なんて幾らでもすてるわよ!」


「もう、僕の知っているカヤじゃないんだね..」


「カヤは王妃になって権力が手に入る...僕は2人の王子を追い抜いてこの国の王になる、勇者と結婚するんだ、それは夢じゃない」


「カヤ様、アール様、その暁には私にも..」


「ええ、言われなくても近衛騎士団長の地位を用意しているわ...勇者パーティの一人ですもの」



「そう、僕はカヤ、君が死ぬまで君を愛そうと努力したんだけどね...本当に好きな人は他に居たんだけど...宿命だからね」


「そ、そうなんだ、トーゴも守り人だから私が好きになるように努力したって事...嘘ばっかり、子供のうちから好きだったはずよ」


「まぁね、一番好きな人(ヒト)だったよ」


「ほら、そうじゃない」


「それじゃ、僕は帰るね..」


「お前は馬鹿か? アール様、カヤ様の未来の為...此処で死んでもらう」


剣聖である、ソードが斬って掛かってきた。


僕の腕の表面が斬れた。


「なぜ、何故だ、腕を切り落とすつもりで切ったハズなのに..」


僕は無視して、歩き始めた。


「貴様、どんなカラクリか知らないが..これでどうだ、武の極み光の剣戟だ」


腕が千切れて飛んでいった。


「これでも死なないだと」


「気が済んだ? なら行くよ..」


「貴様、化け物か...殺してやる、極大ファイヤー!」


体が熱いけど、歩けない程じゃない。


「ぼ、僕はボロボロだよ...これで許してくれないかな」


「あんたに生きていられるとあたしが困るの」


カヤがさっき手に入れた剣で僕の首に斬り込んできた


「これが何でも切れる勇者の力...光の翼よ」


僕の首に当たると青い光を放つ剣は折れてしまった。


勿論、首は飛んでいない。


「聖剣が折れてしまうなんて...何で、こんな事に」


《それはただの綺麗な剣...聖剣じゃないからね》


「流石に腹がたったよ...」


僕は、走りながら剣聖ソードに蹴りを入れた。


ソードは剣を構えて防ごうとした、だが防ぎ切れずに剣は折れて、その鎧をぶち抜き僕の蹴りが決まった。


「死なない程度に手加減したよ...」


ソードは瀕死の重傷で口から血を吐いていた。


「貴様、どうやってミスリルの剣や鎧を壊した..ごふ」


「トーゴ! 貴様、王族に対して不敬だぞ!」


「お前は神に対して不敬だな...」同じく蹴りをいれた、鎧が無い分、死なないように手加減するのは難しいな


「うわっおえ..」


「汚いな...」


「ねぇ、ちょっと落ち着いてね、トーゴ、ねぇトーゴ君..」


「煩いよ..」


僕はカヤの顔に頭突きをした。


「痛い、痛い」


「まぁ、君はこの程度で許してあげるよ..これで鼻血を拭いて」


《どうせ、この後地獄が待っているからさぁ》


「トーゴごめんなさい」


「もう良い黙れ...でも君が捨てた物を見せてあげるよ」


トーゴは何かを呟いた。


そこには、綺麗な金髪、ブルーアイの凄く綺麗な少年がたっていた。



「トーゴ君...なの..」


「うん、僕は僕なりに君の好みになる為に努力はしたんだ、君が死ぬまで傍に居るためにね...」


《これが、本当のトーゴ君だったんだ、まるで大天使様みたい..私の理想の男性そのものだ》


「ごめん、トーゴ君、私が間違っていた..本当に愛していたのは貴方だけ..もう裏切らないだから」


「ごめん、もう遅いよ...さよなら..カヤ」


「待って、待ってよ..悪い所があるなら全部治すから..何でもするから..ねぇ」


「待って、待っててば...お願いだよ...お願い」


「カヤ」


「なぁに...」


「永遠にさようなら...」


僕はその場を後にした。



そして、僕は今、魔王城にいる。


「魔王様、居るかな?」


「貴様、人間風情が魔王様になんの用だ?」


「君は味方だから傷つけないよ...」


沢山の魔族が攻撃する中全てを無視して歩いていく。


そして魔王城の玉座にたどり着いた。


「カーミラ、逢いに来たよ!」


「何だ? 我を呼び捨てにするとは!」


「僕の事を忘れちゃったのかな?」


「はて、そのような美形な人間に知り合いなんて居たかの」


「この姿はカーミラにとっても美形なのかな? 良かった、人族のチンチクリンの理想の姿だから嫌われたらどうしようかと思った」


「本当に誰じゃ...だが不思議な事に嫌な感じがせぬ...なんでじゃろうか?」


「それは少し前まで一緒に暮らしてたからじゃないかな?」


「お前は魔人か魔族か? じゃなきゃその姿...理由がつかん」


「散々、綺麗だと褒めてくれてたよ? 僕は少し前まで君の心臓に刺さっていたんだ」


「なぬ...お前、もしかして聖剣か?」


「当たり..散々褒めてくれたでしょう? 美しいとか神秘的とか...50年も掛けて口説かれりゃ聖剣だって落ちるさ」


「確かに、だが、お主に壁に縫い付けられて他に誰もいない..まさか聞いていたのか?」


「まぁね..だけど、僕は聖剣、君が復活したら封印する宿命が持っている」


「そうじゃな...」


「だけど、そうしたく無かった...だって君と過ごした期間は、他の誰と暮らした時間より長い、前回は50年、その前は80年だよ...まぁ君と居られるから、それはそれで嬉しいんだけど..君の苦痛な顔はあまり見たくないんだ」


「そうか...」


「僕が君といれば、もう勇者も現れない...僕が好きになったり、選んだ人間が勇者になるんだから、ここに居れば人間には会わないからね」


「そうだな」


「ねぇ、カーミラ、僕が君を守ってあげる、だから僕を愛してくれないか」


「うむ、受け入れよう、聖剣よ...我が伴侶になってやる」


「ありがとう受け入れてくれて」


「うむ、我と同じ時間を一緒に過ごせるものはお主位しかいないからな...」


「そうだね、これからが楽しみだ」



..........FIN




暫くして、カヤからは勇者の刻印が消えた。

勇者が聖剣を選ぶのではなく聖剣が勇者を選ぶ事を彼らは知らなかった。

ただの村娘になったカヤは、城を追い出された。

両親を、村を滅ぼしたカヤに行くあては無い。

しかも、勇者として国がふれをを出した以上国が再度ふれを出すしかない。

新しい、ふれには「カヤが偽勇者だった事がしっかりと書いてあった」

王都にも住めず...辺境か他国にでも行くしかない。

その後の彼女を見た者は居ない、





剣聖のソードはあの時の怪我が元で剣が振れないばかりか歩く事も満足に出来なくなった。

彼の一族は騎士の一族だ、ただの厄介者として...その人生は終わるのだろう。


賢者で第三王子だったアールは同じく怪我が元で歩けない、偽勇者の恋人だった醜聞もあり、王族の面汚しとして過ごす事になる。二人の兄は、自分を出し抜こうとしたアールを許さず、結局は暗い塔に幽閉された。


王は先王に諫められそのまま退位した。


英雄王テデュークはあの時の声に気が付かなかった事を悔いた...あの声は正に聖剣の声だった。

勇者だった自分を窮地から何度も救ってくれたあの声だったと後で気が付いた。

そして、軽はずみな行動から聖剣を失った王に退位を勧めた...第一王子が一人前になるまで自分がもう一度復帰するはめになる。













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