第5限目「おじさんたち、一杯やりたい!」
ごきゅごきゅごきゅ。
何の捻りも工夫もない、穢れのない直球勝負。
可愛さだけを前面に押し出した動画。
やはり
「われが一番か。ま、当然じゃの」
「これもうイメージガールだろ。企業からPR料もらってもいいんじゃねーか?」
赤都葉レミドは率直な感想を口にした。この場にいた人間の全てが赤都葉と同じ感想を持っていたと言っても過言ではないほどに完成された動画だった。
「これは文句ないな」
「うむ」
黙って頷く一同。こうして誰一人として反論する者なく、第一回Ti〇Tok動画撮影会は幕を閉じたのだった。
「なあ……今、思ったんだけどよォ……」
藍我が珍しく落ち着いた口調で口を開く。
「お? どうした? 女の子になってついに女の子の日に突入か?」
赤都葉がすかさず茶化しに入る。
「生理が辛いので配信お休しますわ〜!」
「おい、
「じゃなくてよォ……」
藍我は柄になく真面目な面持ちで皆に語りかけた。
「
――飲みたくならねェ?
「あー分かる。特に生とかつけるとね」
「
「ってことで、最高のおつまみ作り選手権開催~! いえーーーい!」
「おお! これは乗ったぜ!」
先ほどと同じく満場一致でこのおつまみ作り選手権の案は可決される。
「最後にパーッとやれる未来が確定してるの、とてもいい……」
右手でジョッキを作りその手をぐいぐいと動かす
「いや、ほんとまるちゃんって顔と動作のギャップがありすぎでしょ。まあ、実際、
「
「おい!
どうやら華美咲は天一に浴びせた一言は、軽く流してもらえたようだ。
「あの……普段あまり料理とかしない場合……とかは……」
不安そうな目で周りを見渡す
「はァ? つまみぐらい作れるだろうがヴォケ! 俺たちはおじさんじゃない」
――美少女なんだよ!
普段から語尾に「ヴォケ」とかつけている人間が言ったところでまったく説得力のないセリフではあったが、藍我の言うことも一理あった。
「なんかこんな番組、あったよな。料理下手な人が料理作って半生とかで出して、『バケツ用意ー』みたいなやつ」
山樹森のこの何気ない言葉が皆の胸中に刺さる。
「いや、中身はおじさんなんだ。さすがに食べ物でないものが提供されるなんてことはない……だろ? よなぁ? あれ? みんな、どうした、目を伏せて……」
赤都葉レミドは露骨に負のオーラを感じ取った。これはひょっとするとひょっとするのかもしれない。そんな不安を胸に抱かざるを得ない赤都葉。
「へへ……次回、料理王決定戦開幕」
――ってことで、よろしくッス。
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