第5話 神社復興の方法って?
そして少女は咳ばらいをして。
「んん……何だか非常に話が逸れた気がするが。ともかくウチが神社復興をお願いしている理由はじゃな。近頃、この一帯を潰して工場を建てようとしている動きがあるからなんじゃよ」
「へぇ……?」
「もちろんそのエリアにはこの神社も含まれとるからな。ここで生活しているウチにとっては、死活問題なんじゃよ」
少女は深刻そうな顔で言った。やっぱりここに住んでいるんだ……なら別の場所に移ればいいんじゃないの?
「そういう訳にはいかんのじゃ。面倒だから詳しい説明は省くが、ウチはこの神社から離れることが出来んのじゃよ」
「物理的に?」
「物理的にじゃ」
「へぇ……」
神様も大変なんだねぇ。じゃあ……。
「その工場を建てる計画を、アンタが潰せばいいんじゃないのか?」
「まぁ……正直出来んことはないのじゃが。ウチだって罪のない人間の死体は増やしたくないんじゃよ」
「……ん?」
なんかすごい物騒なワードが聞こえてきたんだけど。何、死体って。
「じゃから。工場を建てようとしてる人の命を奪うってことじゃ。そうすれば工場設立は中止になって、この場所は守られるじゃろ?」
「……いや、じゃろ? じゃなくて! お前はそんな恐ろしいことをするつもりなのか!?」
「じゃからー。ウチだってなるべくそんなことはしたくないって言っておるじゃろ。じゃがここを潰されると、ウチの住処どころか、ウチの存在自体が消滅してしまうんじゃ」
「……」
……ああ。マジで聞かなきゃよかった。それじゃあ神社とか取り壊そうとして、事故が多発するとか、たまにニュースで聞くけど、あれって……。
「まぁそこの神が怒って、解体を阻止しようとしてるんじゃろうな」
「マジで祟りだったのかよ……」
というかこのままだと、ここも同じようなことが起こるんじゃないのか。そんなニュース聞いたら僕、物凄い目覚め悪いんだけど。
「そこでお主にお願いしてるのじゃろう? 誰も傷つかない方法で、工場開発を止める方法をな」
「もしかしてそれが……神社の復興ってこと?」
「そうじゃ! ここの神社がまた盛り上がって、参拝客が増えると、工場建てようとするのも考え直すかもしれないじゃろ?」
「なるほどねぇ……」
まぁ悪い考えじゃないとは思うけれど……それが上手くいくとは到底思えないんだよなぁ。そんな簡単に、考えなんか変わるとは思わないし。
「いや、上手くいかないと困るのじゃ。それが上手くいかなかったら……気は進まないが、ウチも力を使って食い止めるしか方法がなくなるのじゃ」
「……」
聞いてしまった以上、流石にそれだけは避けたいんだけど。
「でもどうやって神社復興していこうと考えてるんだよ? そもそも僕が手伝えることなんてあるのか?」
「うむ、存分にあるぞ! お主はウチと違って、色んな場所に行けるからな!」
「まぁ、定期券の届く範囲なら行けるけどさ……」
いったいそれが何になるんだ?
「復興の方法は、ウチの方で考えておる。ここで祭りを開催したり、花火とかをやったりじゃな……じゃがそれをするにはまだ知名度も足りないし、何よりまだ夏ではない」
「はぁ」
「じゃからとりあえず今は、あそこの願いから叶えていこうと思っておるんじゃ!」
そう言って少女は神社の端にある、絵馬が飾られてる場所を指差したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます