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どうして私のこと、じーっと見てるの? 好きなの?
私は君に笑顔でベーと舌を出して、あっかんべーをした。(すると君は私に、なんだかすごく変な顔をした)
真由美が浦野くんと出会ったのは、小学校時代のある晴れた春の日の午後だった。
「浦野くん。本当になんでも頑張るよね。どうしてそんなにいつも一生懸命に頑張っているの?」と私は本当に不思議そうな顔をして聞いた。
時刻は放課後。
みんなが帰ったあとの、空っぽになった小学校の教室の中に生徒は二人しかいない。
真由美は一人で残って教室の掃除をしている浦野くんに向かってそう聞いた。「どうしてって、僕は今週の掃除当番だから」と真由美に向かって浦野くんは言った。
「それはそうだけど、そんなに一生懸命になって掃除をする人はいないよ。そんなの浦野くんくらいだよ。みんなある程度は真面目にやるけど、手を抜くところは手を抜いているし、塾とか、家のお手伝いとか、あとは友達と遊びたいからとか、そういうことに時間を使いたいから適当なところで掃除を切り上げちゃうし、……こんなに頑張って教室を本当に綺麗にしようと思っているのは、きっと浦野くんくらいだと思うよ」
と、自分の席の椅子に座って浦野くんの掃除の様子をさっきから飽きることもなくずっと観察している真由美はまるで手伝うそぶりを見せるわけでもなく、ただずっと掃除をしている浦野くんの姿を見続けていた。
浦野くんは真由美に「別に理由なんてないよ。でも一応僕の役割だから、役目を受けた以上はちゃんと仕事をしないといけないな、と思ってさ」と箒とちりとりで教室の床の掃き掃除をしながら言った。
「浦野くんは本当に真面目だね。きっと人生損するタイプだね」と呆れた、と言った顔をして真由美は浦野くんにそう言った。
「別に損してもいいんだよ。僕の気持ちの問題だから」とちりとりのゴミをゴミ箱の中に捨ててから、浦野くんは真由美に言った。(それで浦野くんの今日の掃除は終わりだった。浦野くんが掃除をした教室は本当にとても綺麗になっていた)
「みんな言ってるよ。面倒なことは浦野くんに任せちゃえばいいってさ」にっこりと楽しそうに笑いながら真由美は言う。
真由美が見る浦野くんの汗をかいた満足そうな顔は、(きっと掃除が思い通りによくできたのだと思った)オレンジ色の夕日の色に染められている。(そんな浦野くんの姿を見て、……真由美は、ああ、なんて綺麗な横顔なんだ、と思った)
「まあ、私はそんな浦野くんのこと結構好きだけどね」と机の上にひじをついて、その小さな手のひらの上に自分の頭を乗せながら、またさっきと同じようににっこりと笑って真由美は言った。
「ありがとう」とにっこりと笑って浦野くんは言った。
浦野くんは、掃除道具を掃除用のロッカーの中に片付けると小学校を下校する準備を始めた。
「ねえ、途中まで一緒に帰ろうか?」と学校かばんを手にした浦野くんに席に座ったままでいる真由美は、(……浦野くんの顔を見ないままで)言った。
「え?」その声を聞いて浦野くんはすごく驚いた。そしてこの真由美の言葉を聞いて、やっと浦野くんは、真由美が自分のことを、掃除が終わるまでの間、ずっと待っていてくれたのだと気がついたみたいだった。(鈍感なのだ)
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