青い果実は甘い果実と共に夏に熟れる

九戸政景

プロローグ

 夏の思い出。これは人によって様々だと思う。友達や家族と海や山に出掛けた楽しい物や汗をかきながら部活動に励んだ若い頃ならではの青春、時には好きな子とのちょっとした出来事もあって人間として一皮むけたり大人としての階段を一歩登ったという人もいるかもしれない。

 かく言う俺にも夏の思い出という物があり、その思い出が出来たのは、俺がまだ自分を僕と呼んでいた中学二年生の頃だ。

 その頃の俺は色恋という物にはまだあまり興味はなく、同性の友達と遊ぶ事の方が楽しいと思っていたため、異性に対しての印象は自分とは性別が違う人達という物だった。

 そして、他の奴があの子が可愛いあの子が彼女になってほしいと言う中で、友達が持ってきたエロ本を回し読みしながらこういう体がエロいだの実際に女の裸を見てみたいだのと言うばかりだった。

 けれど、そんな俺の意識はその夏の思い出、一人の女性との出会いがきっかけでまるっきり変わった。

 その人は俺の母さんと同じくらいの歳の人なため、若々しい青い果実というよりは色濃く熟した果実といった感じで、その同年代の異性が放つフレッシュさとは違い、体つきや話し方の妖艶ようえんさと歳を重ねた事で得た女性としての魅了は当時の俺を魅了し、俺は何度もその人の元を訪れた。

 訪れた俺をその人は快く受け入れたが、その人は当時の俺には予想もしなかった理由から様々な方法や物を使って俺を扇情し、女性に対して耐性がなかった俺はまんまとその考えにのせられ、その人の体を余す事なく味わう事になり、ダメだという思いはあっても若々しい性欲を内に秘めていた俺はそれに抗う事は出来なかった。

 そうした中学生男子と大人の女性による夏の太陽のように熱くて他の誰も経験した事が無いであろう爛れた関係は夏が過ぎ去ると同時に終わりを告げ、残された俺は心にポッカリと空いた穴を持て余しながら毎日を過ごす事になった。

 これから話すのはそんな不思議で煌めくような一ヶ月間の話だ。

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