第8話 老練の大島師匠

 条規は相変わらず早起きであった。

〝伊吹〟を使わなければならない相手、そんな緊張も朝4時に目覚めた理由でもある。

流石に、この時間に夏見を起こす訳にもいかないので、身支度をして、朝食を作ろうとした。

夏見を、一緒に連れていくつもりであった。

それは、左手の〝妖魔〟の事もあるからである。

身支度も、朝食もできたので、夏見に声をかけた。

夏見は、寝ぼけた様子で、出て来て「すみません〜私が支度しなければいけないところを〜」とおおあくびをしながら詫びた。

「いや、いいんだよ、食べな」と朝食をうながした。

昨日と同じ様な朝ではあったが、違うのは、条規がいつもより、真剣な顔つきになっているからである。

夏見は、「何か怒ってます?」と二度聞いた。

条規は、「別に」と返すだけである。

今日は、無言に近い状態で、それぞれ朝を過ごした。

二人は、7時にミニクーパーに乗り込み、大島師匠の家を目指した。


千葉県佐倉市 大島師匠宅


大きな門構えの邸宅についた。

条規は、夏見を車に乗せたまま、自分だけ降り、

チャイムを鳴らした。

やや暫くして、門が開いたが、誰も出てこないが

条規は、下を向いてなにやら話している。

出て来ていないのではなく、居たのである。

車の中の夏見からは、大島師匠の背が余りにも小さくみえなかったのである。

条規が大きいのもあるが、大島師匠は、140センチもないであろう姿であった。

車に二人が向かって来て、条規は、夏見の座っている扉を開け、夏見に一回降りてもらった。

夏見は、大島師匠に「初めまして、上杉夏見と申します」と深々とお辞儀をする。

大島師匠は、「ふむ、ふむ、大島じゃ、宜しくな」

と挨拶し、高笑いをした。

大島師匠の容姿は、まるで〝スターウォーズ〟のヨーダのようであった。

条規は、助手席を倒しバックシートに大島師匠を座らせた。

狭い空間だが大島師匠には、どうってことない狭さである。

三人は、一路依頼者の家に向かった。


香取市 依頼者宅


依頼者の家に着くと大島師匠が、玄関でチャイムを鳴らすと疲れた様子の50代の主婦がでできて、

何やら、大島師匠に話、仕切りにお辞儀をしている。

大島師匠に呼ばれ、条規、夏見も家に入った。

三井大輝 それが依頼者の若者の名前であった。

どうやら、半年程前から、摂食障害になり、どんな病院で見てもらっても原因は、精神的で終わってしまい、困り果てていた。

母親に案内され、三井大輝君が寝ている部屋に三人がはいる。

そこにら、やせ細り、もはや〝骸骨〟に近い青年が

ベッドに横たわっていた。

夏見は思わず「匂います‥例の匂いです」と口走った。

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