第3話 施設

 夏見は、恐る恐る口を開いた。

「私、施設で育ったんです‥父も母も知らないんです」そう言って、条規の顔の変化を注意深く見ている。

条規は、それに対して肯定も否定的な感情も覚えなかった。

眉間にシワは寄ったであろうが次の言葉をまった。

 夏見は一呼吸おき、言葉を一つ一つ確認するように話始めた。

 「今も施設から、この病院に入院したんです 高校には、通っていたんですけど‥」

そこで、一旦止まってしまったのを条規は頷き〝スペース〟を作った。

あの〝妖魔〟といい、両腕の〝自傷行為〟であろう傷からも察しがつくように、よっぽどの事があったに違いない、ずけずけと質問攻めになどする気はなかった。

 暫くして、条規は「施設の方は親切かい?」と質問した。

 夏見は、感情が溢れボロボロと涙をこぼし始めた。

条規は〝しまった〟と思ったがただ待った。

やがて、夏見は話を続ける。

「匂いが‥私、男の人が卑猥な事を考え、私に対して‥その‥解るんです!良からぬ事を考えてるのが!叔父様は‥その‥匂いがしないんです!だから話そうと思って‥」夏見は思い切って伝えて、少しスッキリしたようである。

条規は「それは辛いね、解らなければ普通に生活できるのにね」と親身に考えを伝えた。

夏見は「明日には、退院なんです!またあの施設長の元へかえらなければならいんです!凄い匂いなんです!私に対して!」夏見の目は真剣に助けを求めていた。

条規は、「そうか‥」と言い、少し考え込んだ。

確かに、〝左手の妖魔〟の事も引っかかってはいたのだか、条規も簡単には、〝うちにおいで〟とは言えなかった。条規も事情があるのである。

ただ、彼女の匂いで〝妖魔〟が解る力には、魅力を

感じていた。

もしかしたら、彼女の能力により15年来追い続けている事に、〝進展〟があるかもしれないと考え始めた。

条規は、意を決して「一週間くらい、退院のばせるかな?そうすれば、ウチの空いてる部屋貸してあげるよ‥」そう言うと夏見の目から喜びが溢れた。

「ありがとうございます!あの施設長から逃げられるなら、掃除でも洗濯でも何でもします!

ありがとうございます 叔父様」

条規は「その叔父様はどうにかなんないかな?」

と笑った。

 ここから、条規と夏見の共同生活がはじまることとなるのである、

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