クマのぬいぐるみと行く、監禁型ダンジョン攻略

白名ぽっぽ

第1話 くま好きの少年、美少女になる

――あなたの容姿が変わるとしたらどんな容姿になりたいですか?




――あなたの願いが叶うとしたら何を願いますか?




――それらが現実となるなら死ぬかもしれない試練に挑めますか?


 







 俺は人には言えない秘密がある。


 俺はかわいいクマが好きだ。


 あのくりっくりの真ん丸の目に、丸い耳めちゃくちゃ可愛い。


 一人暮らしなのをいいことに俺の部屋にはクマのぬいぐるみがいっぱいある。


 好きすぎて外に出かける時にも連れていきたいがさすがに人の目が気になって出来ない。


 いくら中性的な見た目とはいえちょっと厳しい。



 俺の見た目では厳しいが、クマのぬいぐるみを持ち歩いても問題なさそうな人もいる。


 幼い女の子や、地雷系女子なら違和感なく連れていけるだろう。


 幼い女の子は身長的に流石に無理だが、地雷系女子の姿に女装ならなんとかなりそうな気がする。

 

 そう思いたった俺はネットで調べまくって必要なものを色々買い漁っていた。


 謎の声が聞こえたのはそんな時だった。






――あなたの容姿が変わるとしたらどんな容姿になりたいですか?




 めっちゃ可愛い地雷系女子。


 誰の声? とか思う前に即答していた。





――あなたの願いが叶うとしたら何を願いますか?



 クマのぬいぐるみが犬や猫みたいに動いてくれること。


 ちっちゃいクマをペットにしたい。





――それらが現実となるなら死ぬかもしれない試練に挑めますか?




 余裕でしょ。




 どっちも絶対ありえない事が現実になるならそのくらいの対価が必要だろう。


 というか無償でこのレベルの願いがかなったら怪しすぎて怖い。


 変な夢だったなぁ……。どうせなら現実だったらいいのに。








「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」




 朝起きたらめっちゃ可愛い女になってた。


 しかも何故か着てる服も地雷系ファッションになってる。




[ん....?]




 足になにか触れた感覚があったから振り返るとお気に入りのクマのぬいぐるみ、『ココくま』が俺の足をつんつんしてた。




「ふっ、うわああああああああココくまが動いてるぅうううううう!!!」




 大好きなクマのぬいぐるみ、その中でもお気に入りのクマ、ココくまが動いている事が嬉しすぎて、ココくまを思いっきり抱き締める。

 



「ああぁあ、ふわふわで気持ちいいぃよおおお」









 あれ、見た目と願いが現実って事は、死ぬかもしれない試練もあるって事!?



 ばっちこいやー!!!



 今の俺は願いがかなって不死状態と言っても過言ではない。


 試練で生き残ってココくまとお出かけするんだー!!






――試練対象者の転送を開始します。






 気がついたら俺は床も壁も天井も真っ白な建物の中に立っていた。


 俺の腕の中にはココくまが居るおかげで取り乱さずに済んだ。ココくま最高。




 どうやら俺がいるのは建物の通路らしく、窓の外には草木がずらっと続いている。


 しかし、この建物以外の人工物は見当たらないし、人の気配も一切ない。




――試練についての説明を開始します。


試練は踏破試練、討伐試練、生存試練など色々な試練があります。


試練を達成した時などで試練ポイントを入手可能です。


試練ポイントでは試練達成の為の自己強化や物の入手など様々な事が可能です。


制限時間内に試練達成できない場合や、挑戦者が死亡した場合試練失敗となります。


全ての挑戦者の活動は私室を除き、試練ライブネットにて常時配信されます。


現在日本エリアの挑戦者1000000人。


挑戦者が0になったエリアは消失します。


本日12時より生存試練を開始します。


生存試練は決められた期間、生存していたら試練クリアとなります。


期間は3時間です。


敵は異界ゲートから現れます。異界ゲートがある大部屋では挑戦者に能力バフが付与されます。


初期配布の装備品等用意していますのでマップをご確認ください。


試練ポイントの確認、試練内容確認、試練ポイント交換、マップの確認、ランキング確認は私室に用意している携帯端末で行えます。――






「え、なになに、一気に言われても困るんだけど」


「クマァー」


「ココくま喋れるの!? あああかわいいいなぁあああ」


 あまりの可愛さにココくまを強く抱きしめる。

 いきなり抱きしめたせいか、ココくまは手足をバタバタさせていた。かわいい。



「って時間ないんだった。せっかく願い叶ったんだからこんな所で死ねない。まずは携帯端末取りに行くかなぁー」


「クマっー!」


「あぁああかわいいぃー」


くまかわいすぎるんだが。







 真っ白な廊下を進みながら、目に付いた扉を片っ端から開けていきなんの部屋か確認していく。


 思ったよりもこの白い建物は広く、更に部屋1つ1つがかなり大きく私室を見つけるまで結構時間がかかった。


 道中では巨大倉庫かと思いたくなる程広い部屋を埋め尽くす程の服が用意されている部屋や、図書館、プール、映画館などいろんな部屋があった。


 そしてこれだけ広い建物を歩き回ったけど、誰とも出会わなかった。


 日本エリアの挑戦者100万人って言ってたから、ある程度の人数ごとに用意された建物かと思ったけど違うらしい。


 そうそう、念願のクマのぬいぐるみを連れてても問題なさそうな地雷系女子になって気がついたんだけど、歩き方や仕草とかが男の時と変化してて、その辺も女子として違和感ないものになってるっぽい。


 謎の声のサービスなんだろうか、それともそういうの立ち振る舞い含めてのなりたい姿って事だろうか。


 口調は変化してないみたいだから自分で変えないとね。一人称もこの見た目なら私かな。




「さて、私室見つけたしいくよ、ココくまー」


「クマァ」


 私室の広さは常識的な範囲で広めと言ったところ。床は絨毯が敷かれててベッドやテーブルなどの家具も高級感あってホテルみたい。


 テーブルの上にはスマホっぽいものが置かれており手に取る。




――魔力登録完了。あなたの名前を決めてください。名前はランキングや、試練ライブネット、挑戦者同士でやり取りする際等に使われます。




 本名は性別違うから違和感あるし、というか嫌だし。


 くま☆パラダイス、略してくま☆パラにしよう。


 ☆はつけた方がパラダイス感あるじゃん?






――名前をくま☆パラで登録しました。






「まずはマップかな...、ん、ステータスってあのステータス? どれどれ」






名前:くま☆パラ


レベル:1


ジョブ:


従魔:ココくま 戦士 レベル1


試練ポイント:0


試練ライブネットお気に入り:12




「ココくまの戦士って多分ジョブだよね? なんで私には無いんだろ、なんで?」


「くまくまー!」


「励ましてくれてるの? ココくまありがとね」


 ココくまは私の腕を抜け出して、肩に乗ると頭を撫でてくる。


 あぁ幸せすぎてやばい。

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