第6話 ホームにて


早朝の駅のホームは人がまばらだ。


一人のサラリーマン男性が、ふらふらとホームの端へ歩いて行き、その向こうへ跳ぼうとしていた。

「ちょっと!」

私はぎょっとして一歩踏み出す。

振り向いた男は、血だらけ。ニヤリと笑った。

え、と止まった肩に後ろから手を置かれ、そのまま引き寄せられた。

「ーー放っときな。もう何処へも行けねぇから、ソイツ」

振り向くと、金髪のいかにもチャラい風貌の若い男がいる。

再びホームを見ると、サラリーマンの男はもう居ない。落ちたのかと線路を見るが、誰の姿もなかった。

「……まぁ、俺も一緒かぁ」

耳元で諦めたような声がして振り向くと、若い男が目の前で掻き消える。声も出ない。


『三番線に電車が参りますーー』


いつも通り過ぎるアナウンスが、少し悲しく聞こえてしまった。

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