安心
(……夢?)
ゼノはゆっくりと目を開けると、アルが心配そうな顔でこちらを覗き込んでいた。
ゼノが目を開けたことに気づくと目がうるうるとしだす。
「……ゼノさん!良かったです!!」
そう言ってアルはゼノに抱きつく。
目覚めて早々美少女に抱きつかれる……今までの苦労は全部これの為にあったのか……
いい人生だった……
「おー……二人ともそういう感じだったんだ〜」
意識が飛びかけていた時に椅子を滑らせてきたドクターがカーテンから半分顔を出してニマニマしながら言う。
はっとしたアルは顔を赤く染めるとゼノから慌てて離れる。
「ち、違うんです!そういうのじゃ……!」
「お〜、顔を赤らめる所まで完璧だねぇ、かわいいねぇ〜」
「やめてくださいッ!!!」
そんなやり取りをしばらくしていると部屋の扉が開いてユビキタスが入ってくる。
「無事で何よりだ、ゼノ」
「ありがとうございます……所で、どのぐらい気を失ってたんですか?」
「……9年や」
ええぇぇえ!
「ルーメンさん……冗談は程々にして下さい」
ユビキタスが頭を抱えて言うとにいつの間に居たのか、ルーメンがいつもの胡散臭い笑顔で立っていた。
「ん?なんや、こーゆー時の場を和ませるのが保守者の仕事ちゃうんか?」
「違います、あとそこのリンゴはゼノのなので食べないで下さい」
「ふぉんまふぁいな……うぉめんなぁ(ほんまかいな!……ごめんなぁ)」
ルーメンはいつの間にか切ったのかリンゴをうさぎ型に切って口いっぱいに頬張っていた。
「うぇ!?そうなの!?私も食べちゃったー……テヘッ」
ドクターも食べていた。
「ドクター……正直で宜しい、ご褒美だ」
「ふぁめぇろぉぉー!!!(やめろぉぉー!!!)」
ユビキタスはそう言うとドクターの口にリンゴを詰め込み始めた。
ユビキタスがドクターと格闘しているのを後目にゼノは先程の夢の事が頭から離れない。
彼女は最後に気になる言葉を残していた。
(また会えるといいね……か)
彼女はあの場所で何をしていたのだろうか、《編集》には何の意味があったのか、そもそもテラも彼女のことを知っているようだったがどういうことなんだろうか? そんな疑問がふつふつと湧いて来るのを感じつつもゼノは立ち上がろうとする。
「ッ……」
すると一瞬ぐらっと視界が眩み、足に力が入らなくなる。バランスを崩した所をユビキタスが支える。
「《編集》の反動だ、身体はしばらく言う事を聞かないから安静にしとけ」
そう言うとそのまま反重力で持ち上げられてベットに戻される。
「まあ、諸々込みであれだけ大規模の《編集》扱えるのが驚きやわ……反動は酷いけどなぁ」
ルーメンは真剣な顔つきでリンゴを口に運びながら言う。
「ひとまず!しばらくは絶対安静!」
リンゴを何とか飲み込んだドクターがそう言うとアルとユビキタスも頷く。
「分かりました……色々とありがとうございます」
そう言うとドクターはにこっと笑い、後ろを向く。
「さ、面会終わり!!!怪我人にストレス掛けないように出ていきなさーい!!」
そんな和やかな空気の中、疲労からかゼノの瞼はゆっくりと落ちていった。
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