尋問
資料を受け取ってからしばらくした後にゼノはテラのオフィスに呼び出されていた。
「資料に一通り目を通しましたか?」
「はい……ですが、あの……」
ゼノが何かを言い淀んでいるとテラは察したのか笑顔で答える。
「黒塗りされている部分ですね?今回の尋問とは関係ないので消しておきました」
「なる……ほど」
(絶対嘘じゃん……)
ゼノの疑惑の視線を感じたのかテラは笑顔のまま話を続ける。
「それはさておき、そろそろ書類に記載されている所定時刻なので、尋問を執り行って頂きますが……大丈夫ですか?」
「あ、はい!大丈夫です!」
(ちょっと怖いけど……)
ゼノのそんな様子を察したのかテラはニヤリと笑うとカードを手渡す。
「尋問室の鍵です、無くさない様に」
「あ……ありがとうございます……」
(もしかして俺の考え読まれた!?)
ゼノがそんな事を考えているとテラは表情はそのままで明るい口調で話し出す。
「尋問中は尋問担当者以外は一切関与しませんので頑張ってくださいね」
「え!?」
その言葉に唖然とするゼノを面白そうに見ながらテラは続ける。
「当然、私もその一人ですので……ゼノさん1人で頑張ってください」
「……はい……」
(プレッシャーかけないでぇ!!)
ゼノが涙目気味になっているとテラは話を切り上げる。
「では、そろそろ始めましょうか」
「……分かりました」
ゼノはオフィスを後にするとテラのオフィスの外で待機していた看守に案内されて『収容区画』へ向かった。
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看守に案内されるがままに進むと『収容区画』と書かれた扉に着く。
(ここが……フォルスの房か)
「こちらです」
そう言うと看守は扉を開けてくれるので、ゼノは中に入り広い通路へと出た。するとそこには複数の重々しい扉が並んでおり、重苦しい空気が漂っていた。
「どうぞ、尋問官」
看守がそう言って指す先には尋問室と書かれた扉があった。
(いよいよか……)
ゼノはゴクリと唾を飲み込むとその扉の鍵のスキャナーへと手を伸ばし、カードキーを通す。
すると、ピピッという音と同時に扉が開く。
「失礼します……」
そう言って2重の扉を抜けると中にはガラス越しに粗末な椅子に腰掛けているフォルスの姿があり、ただ静かにこちらを見つめていた。
「……小僧が尋問官とはな、舐められたものじゃ」
「……」ゼノは何も答えず椅子に腰掛ける。
「……まあ良い、とっとと始めるんじゃな、妾は何も言わぬぞ」
「分かりました……では、最初の質問です。あなたはディヴェデのメンバーですか?」
ゼノがそう聞くとフォルスはニヤリと笑う。
「言うわけなかろうて、無粋じゃな小僧」
「……では、仲間の居場所は?」
「言わぬわ、死んでもな」
(……でしょうね)
ゼノが呆れているとフォルスは続けて話す。
「妾から情報を取り出したければ直接脳でも開くんじゃな」
(そんな事できるわけ……いや、OCOなら出来るのか……?)
そんなやり取りを数回繰り返した後ゼノはため息をついた。
「はぁ……では、ここからは書類に書いてある内容を聞きますね」
ケースから書類を取り出すと机の上に広げる。
その時に勢い余ってか床に書類が落ちてしまった。
「おっと……」
しゃがみ込んでその資料を拾おうとした瞬間、フォルスの視線が落ちた資料の方に向いた気がした刹那。
「小僧……!それをどこでッ!?」
フォルスは椅子から立ち上がろうとするが椅子ごと地面に止められていて拘束されているフォルスは立ち上がること無く拘束具をガタガタと揺らすことしか出来ない。
「こ、小僧ッ!それを寄越せッ!!」
突然のフォルスの変貌ぶりにゼノは戸惑いながらも落ちた資料を拾い、机の上に裏返しに置く。
(急にどうしたんだ?)
「はよぅ!それを妾に渡せッ!」
フォルスは先程の冷静さを微塵も感じさせないほどに声を荒らげる。
その様子はまるで何かに怯えている様にも見えた。
「……」
(この資料……何かがおかしいのか?)
ゼノは書類を表に返すとその内容に目を通す。
しかし、黒塗りが数箇所あるぐらいで他には何も変わったところはない。
「この黒塗りの部分に何か……?」
ゼノがそう言うとフォルスはハッとした様子で言う
「……小僧、何も言わぬぞ」
フォルスの目には怯えと怒りが入り混じっているように見えた。
(何かディヴェデに関する重要なことなのか?)
ゼノは資料を再度裏返しに戻すとフォルスに話しかける。
「では、次は別の質問です」
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