第149話 結婚指輪とドラゴン

 チェルシーと開拓団のリンクル族達の商談がまとまり、オスカーとチェルシーもこの村で1泊することになった。


 今夜の食材は全部チェルシーが提供で大規模バーベキューとなった。


 自分は多くの人の中は得意ではないので、皆の輪から外れて川の近くでのんびり星空の下で生前から持ってきていた薪をヒスイの明かりを頼りに、阿修羅像を無心で彫っていた。


「よぉ、こんなところで彫刻か?」


 背後を見るとそこにはオスカーが立っていた。


「バーベキューは良いんですか?」

「チェルの料理は毎日食べてるしな」


 オスカーとチェルシーの関係は良好のようだった。


「プロポーズとかはしたんですか?」

「いや、まだだなきっかけがな……」


 こっちはこれからだったか、自分の中ではすでに結婚までしていると思っていた。


「指輪作りましょうか?」

「そうだな、頼めるか?」

「チェルシーさんの指輪のサイズは分かります?」

「7号だな」


 どうやって聞き出したのか気になった。


「それって地球基準の大きさですかね?」

「あぁそうだ」


 アイテムボックスからリングゲージを取り出した。


「おま、それ指輪のサイズを確かめるやつだよな?」

「そうですね、1号から28号までならここにありますね」

「何でそんなもん持ってんだ?」


 聞かれると思った。普通の人ならリングゲージ持ってる人は居ないだろう……


「いや~生前自分で作った指輪でプロポーズしようとしてたんですよ、プロポーズしようとした当日に事故で亡くなっちゃいましたけどね」

「そうか、すまないことを聞いたな」


 オスカーが少し申し訳なさそうな表情を見せた。


「いえ、23年後位先ですが、会えますからね気にしないでください」

「そういやそうだったな、早く会えるといいな」

「そうですね、んで話戻しますけど、素材とか何か希望あります?」

「そうだな、色的にはミスリルかオリハルコンだな」

「付ける宝石みたいな物は?」

「宝石か~無いな……」

「ドザズトアダンジョンで色々拾ってるんで希望があれば出しますよ」

「何を持ってるんだ?」


 オスカーの前にピンポン玉サイズの様々な宝石を出した。


「ピンクサファイアで……、たくさん持ってるな」

「了解、ブリリアントカットみたいなのは期待しないでくださいね」

「それ位はな、デザインは任せるよ」

「了解」


 行動速度上昇、熱魔法、オリハルコンの彫刻刀を使い、オスカーとチェルシーの幸せがいつまでも続くように、そして必ず持ち主の元に戻りますようにと祈り魔素を込めながらリング部分を加工していく、ある程度形が出来たら、次はポンポン玉サイズのピンクサファイアの加工に取り掛かった。正方形のスクエアーカットにして、指輪の台座にはめた。


「これでどうですか?」

「こんな短時間に、ハイクオリティかよ……、お前なんで戦争なんかに首突っ込んでるんだ……?医者としてだけでなく、彫金師としてもやっていけるだろう……」


 あなた方が入ってみればと王都で言ったから選択肢の1つになったというのに……、オスカーの言う味方の死者0は達成している。といっても単独潜入して、安全確保してから軍を呼んでいるから当然と言えば当然だが、チェルシーの口から出た無血開城は既に達成済みだった。


「騎士団に入ればって言ったのは2人じゃないですか、オスカーさんのいう味方の死者0はまだ野戦やってないんであれですけど、無血開城で都市攻略は達成しましたよ」

「あ~そういえば、大会の前だったか、姫さんがお前のとこに来たって頃に、そんな話してたか?俺らからすれば単独で攻城は簡単だよな、防衛は無理だが……」


 オスカーの場合は弾無限の銃火器があるからな、制圧戦は楽そうだな……、ロケットランチャーやグレネードランチャーで城門や城壁破壊、兵士でも何でも爆破で吹っ飛ばしそう……、そもそもオスカーなら周囲の損害を無視すれば防衛も簡単そうだなと思った。


「そうですね、多勢に無勢って言いますからね、で、指輪のケースはどうします?木箱位なら作れますが」

「いや、大丈夫だそのままでいい」

「じゃあ、はい」


 オスカーにピンクサファイアの指輪を渡した。


「すまないな、代わりに何か欲しいものあるか?」


 ある!オスカーなら持ってそうな物!ドラゴンダンジョン攻略してたなら持ってるはず!


「あ~それなら、ドラゴンの素材が欲しい!」

「そんなんでいいのか?バハムート、ティアマト各5体ずつでいいか?」

「そんなに!?」


 まさかの量だった、1部貰えればいいかなと思っていたが、まさかの丸々合計10体も貰えるとは思ってなかった。


「まだ大量にあるからな、使ってくれるなら全部渡してもいい」

「いや……、必要になったらまた言うさ」

「そうか、肉は旨いぞ、解体が激しく面倒だがな」


 解体ね……、自分には神の手というものがある。


「1体出してもらっても良いです?」

「あぁ、全部出すよ」


 そう言うと、オスカーが河原にティアマトとバハムートと思しき死体を10体出した。どれも全長20m以上ある大きさだった。


「大きいですね……」

「こいつらは最下層に居たやつだからな、十分な素材が取れるだろうよ、血や臓器も素材になるからな、無駄な所なんてないぞ」

「ありがとうございます」


 とりあえず、各1体残してアイテムボックスに入れた。そして残っている死体に触れ神の手を使い解体したが、これがいけなかった。血がばっしゃーと地面に吸い込まれていった。今度からは血を入れる容器を準備してからやらないと駄目だなと反省した。


「あぁ~もったいねぇな~、血は高値で取引されているっていうのに……、しっかし一瞬で解体したのか……」

「便利ですよねこの力」

「便利すぎると言うか、うらやましいがな、オダマキ大陸の北側にあるレイク王国にドラゴンダンジョンがある、気になるなら行ってみろ」


 オダマキ大陸か、たしか時がきたらとソラリスさんが言っていた場所があるところだ、機会あればいってみよう。


「情報ありがとうございます」

「もう1体あるが解体するのか?ドラゴンの肉はマジで旨いぞ」


 それは食べたくなるな、ちょうどバーベキューしているし皆で食べるか、残っている死体も解体した。血はもう諦めている、どうせ神の手を使えば無限に取れるのだから……


 2体のドラゴンの肉を持って、オスカーと一緒にみんなの元に戻り、みんなで一緒にドラゴンステーキを堪能した。

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