第72話 アーマーセンティピート

 山小屋を出て王都方面へ向かうと目の前には辺り一面森の木々でうめつくしていた。


 あの中にアーマーセンティピートがいるのかと思いながら、しばらく歩くと辺りは山道から林道になった。


『ナット、この先で馬車がアーマーセンティピート2匹に襲われている。』


 急ごう!行動速度上昇と連続縮地を使い現場に急行した。


 現場に着くと、どこかで見た事があるような馬車と冒険者と思しき6人が2匹のアーマーセンティピートに襲われていた。


 ラーネバンのスタンピード時に身に着けたヘイト集めの技を意識し叫んだ。


「秋津直人!助太刀します!」


 2匹のアーマーセンティピートのターゲットが自分になったため、2匹を引き受け馬車から離れ森の中に入った。


 2匹のアーマーセンティピートは、連携がとてもうまく、片方が自分の気を引いて、片方が自分の隙を見つけて突っ込んでくる動きをした。


 刀で切り払いながら鞘も使い殴ったり斬ったりしていくが、大きいだけあって多少切り刻んでも動じず果敢に襲ってくる。


 行動速度上昇使っているのに普通に動き回っているように感じた。


 そもそも2匹とも何処に心臓があるのさ……、斬っても斬っても動き回るし、1匹は頭を落としても動き回っている。


 なんで!とか思っていると、ヒスイが叫んだ。


『後ろ!』


 2匹の攻撃を回避しながら横に飛びのくと今まで自分いた所に2匹より1周り以上大きなアーマーセンティピートの頭があった。


 そして体を起こした奴は、左目と左の触覚がなかった。


「山小屋の人が言っていたやつか」

『だね~』

「頭を切り落としても動き回るのはなんで?」

『そりゃ、脳に代わるものが別にあるからさ』


 蛇とか脊椎のない生き物がそうだった気がするが、ムカデも……?


 3体のアーマーセンティピートと対していると頭を切り落としても動いていた奴が動かなくなった。


 あと2匹、大きいアーマーセンティピートが非常に厄介だ、体は大きいくせにあほみたいに素早い、行動速度上昇使っているっけ?と錯覚するレベルで素早い。足を切り落とし、頭を切り落としていくうちに、大きいアーマーセンティピートだけになり、大きいのも既に首無し状態だ1匹だけになったらあとは簡単だ行動速度上昇使いつつ縮地連続で切り刻んでいく、さすがにミンチになったら動かなくなった。


「なんか初めて魔物に手こずった気がする」

『切り刻むより、さっさと触れて殺せばよかったのに』


 そうでした神の手を使った方が早かった。


 襲われていた馬車の元に戻ると、馬と、2人の冒険者と見たことのあるメイドさんが、アーマーセンティピートの毒にやられているようで、横たわり苦しそうにしていた。手当をしようと近寄るとメイドさんはアヴェナラ侯爵の所にいたメイドだった。


 ということは、辺りを見回すと、冒険者に気にかけている男がこちらに気づいた。


「お、やっぱりナット君か、先ほどちらっと見た時君の姿が見えたからね、元気だったかい?」

「えぇ、まぁ……」

「どうだろう、彼女たちを治せそうかい?」

「診てみますよ」


 1人1人診ていくと普通のムカデに咬まれたような赤い腫れが見られた。体内に入り込んでいる毒素を消していった。


「これで大丈夫ですよ」


 馬と3人はそれぞれ体の感触を確認している様子だった。


「ありがとう、ところでなぜここに?」


馬車の向きを考えると、王都方面だよな……、王都へ行くとなったら一緒にと言われそうだから嫌だなと思った。


「ティファに向かっていたんですよ」

「そうか、反対方向か、王都に向かっているなら是非一緒にとおもったんだが……」


 やっぱり!


「道中気を付けてください」

「君もね、本当に助かったよ。それじゃあ出発しようか」


 侯爵の乗る馬車が王都へ向かったのを見送った。


『ヒスイ、この森って結構危険?』

『そりゃね~日中はアーマーセンティピートとシルバーウルフ位だけど、夜はブラウンベアーも動き出すからね、だからこの森を抜けるまでは休まずに進むのが鉄則みたいだよ』


 安心できる場所が無ければさすがに野営をしないか、しかたない、ここで会ったのも何かの縁だし、森を抜けるまで離れて見守る事にした。


 縮地を使い近くの木の陰に隠れつつ、木の陰から木の陰へと縮地を使い移動し馬車を追いかけ見守った。


 ヒスイが魔物の位置を言ってきたら先回りして討伐を繰り返し3日後の朝、侯爵の乗る馬車がようやく森を抜けた。


 3日間夜通しか、冒険者達も交代して馬車の中で休んでいたようだが、やりたくない仕事だなと思った。


『この先危険な所は?』

『もうちょっと進むと王国1の穀倉地帯に入るからあまりないかな』

『了解、それなら改めて王都へ急ぐか』


 侯爵たちを見守るために気を張ってたからかなんか疲れた。


 侯爵たちの一行を行動速度上昇と連続縮地を使って追い抜き王都を目指した。

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