ヒーラーのヒラノさん

Scene01 目覚める力

第1話 ゾンビなんて怖くない

「ゾンビだー！ゾンビがきたぞー」

　村人の顔が恐怖に染まる。

―ゾンビとはゾンビ病になることで発症する接触感染の病気であり感染したモノの総称。

　ゾンビ病に感染したモノに直接攻撃され命を落とせば感染すること以外なにもわかっていない不治の病。―

　逃げ惑う人々。

　村は一瞬で戦場へと変わる。

「さぁさぁどうする？」

　剣士のマーガレットがそういって盾兵のドワーフ族ライセンに言葉を求める。

「どうするって……守るだけだよ私は」

「そっかそうだよね。

　私はアタッカーだからゾンビの頭を破壊するしかあの人たちを救えない」

「うん、私は村人を守るね」

「うん、お互い死なないようにね」

　マーガレットが大地を蹴る。

　そしてゾンビの頭を剣を斬ろうとしたとき。

　その剣がオークの手により阻止される。

「オーク？」

　マーガレットが驚く。

　しかし剣を離さない。

「オークがゾンビを連れてきた？」

　ライセンがそういってオークを斧で斬ろうとする。

　しかし軽やかに避けられる。

「それに素早い！」

　マーガレットが剣から手を離し小刀でオークの喉仏を斬る。

「あー面倒クセェな」

　オークがそういってため息を吐く。

　喉仏を切られたオークは生命力が高いのか喉仏を切られても超人的な再生力で傷を再生させた。

「えー？マジで？このオーク喋った？」

　マーガレットが驚く。

　オークはマーガレットを地面に叩きつける。

「殺していいか？」

　オークがそういうと別のオークがいう。

「ダメだ。人間は金になるしフィサフィー様の意向だ。

　コイツらはある程度の戦闘力がある。

　優秀な人間と配合させて強い兵を産ませる」

　そういってオークたちが笑う。

　ライセンもマーガレットも死を覚悟した。

　自害しようかと考えた。

　しかし、自分たちは傭兵。

　ここで死んだら村人がどうなるかわからない。

　最後まで戦おう。

　そう覚悟した。

　そして気づく。

　村人たちがゾンビたちに襲われていることを……

　全滅する？

　それが頭をよぎる。

「ヒールっと」

　少年の声が響く。

「あああああああ」

　ゾンビたちが苦しそうな悲鳴をあげる。

「なんだ？ゾンビにダメージを与えた？」

　オークがそういって驚く。

「あああああああ……ああ？」

　ゾンビの姿かたちが人間の姿へと戻る。

「うん、回復」

「誰？」

　マーガレットがその少年の方を見る。

「僕？僕の名前はヒラノ。

　ただのヒラノだよ」

「ヒラノ……？」

　そういったマーガレットの肩にヒラノは腕を乗せた。

「君もヒールっと」

　ヒラノはそういってマーガレットの傷を癒やした。