第7話

 半年ほど前のことだった。学校の帰り道で、他学年の男子三人に囲まれて、

「お前、首つりの家の子だろう。」

と言われた。いつも一緒に帰る女の子達が、揃いも揃って風邪で休んでしまい、私は一人で歩いていたのだ。

「何だって!もう一度言ってみろ!ただで済むと思うな!」

たまたま持っていた傘を振り回し、男子達を追い回した。

「うちの家が古いからって、お前達の言っていることは差別だぞ!わかっているのか!どこのどいつだ!」

と大声で叫んだ。男子達がバラバラに逃げたので、誰一人捕まえることはできなかった。私の姿を見たら、お嬢様育ちの母は卒倒しただろう。

 普段から、私は母を困らせたくない一心で、家の中ではできるだけ大人しくしている。その反動なのか、家の外では、何かのきっかけで爆発することがあった。前にも家のことで、となりのクラスの意地悪な女子達にからかわれたことがあった。

「あんたの家、いまだにかやぶきなんだって。住心地はどう?」

と言われ、

「すごく快適!知らないの?かやぶきは日本の風土にあってるのよ。」

と言い返してやった。確かに、地域の中で、最後に残ったかやぶきの家が、私の家だった。米作りが盛んなところで、周りはほとんどが農家住宅だったが、よその家の屋根は瓦葺きだった。ただ、家のなかは少しずつ手を加えてあったので、私達はそれなりに快適に暮らしていた。余計なお世話だ。

 男子達に、「首つりの家」と言われた時は、当時流行っていた、旧家を舞台にした殺人事件の映画のせいだと思っていたが、本当に私の家で不幸な出来事があったのだ。そう言えば、裏庭の南天を除けば、私の家は、よその家のように木が植わっていなかった。木製の大きな門を入って玄関まで、それなりの広さがあるにもかかわらず、砂利を敷き詰めてあるだけだった。ひょっとしたら、不幸な出来事の後、家の人達は木を切ったのかもしれないと思った。

 

 

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