夏休みの宿題

ゴロゴロ卿

プロローグ

 今年のお盆は妻の実家に帰省することになった。

 妻と息子の三人で一週間以上お世話になる予定で、その間に墓参りやら本家への挨拶やらも済ませる。


 高速を降りて田舎道を二時間、明日にも廃線になりそうなローカル路線の駅近くに妻の実家は建っている。電気は来ていても水道は来ておらず井戸水を使っている。使ってはいないそうだが未だ土間が健在、家の続きでは昔、牛を飼ってたというし、鶏小屋や畑まである。そして線路の向こうは一面田んぼだ。


 そこに義両親と妻の兄夫婦が住んでいる。兄夫婦はともに村役場に努めていたはずだ。そして義父はその昔、村長も務めていた名士だそうだ。


 昔気質の義父の名前は留蔵、なぜか上品な雰囲気を醸し出す義母はたえ。共に健在で、毎朝畑仕事に出るほどぴんぴんしている。毎年、息子の面倒を見てもらっているが全く危なげがない。


 ただ、一つ不安といえば考え方が古臭い。知識がカビ臭い。悪気はなくとも時々息子に変な情報を与えてしまうのが困り者だ。まあ、あとで正せばいいんだが。


 そんなお盆のある日、息子は宿題を手伝ってもらうといって義両親のいる部屋へ行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る