第18話 錯乱した夜の金曜日

良は、出張先から金曜日の夜に自宅へ帰った。


家には毎日電話をかけたが、電話に出るのはいつも祖母の文だった。


なんとか、出張先のトラブルは終息へ向かっており、今日帰ると自宅へ伝えている。


携帯電話も水曜日に購入した。だが、SIMカードは元に戻らず、電話帳も確認できなくなっていた。


自宅の電話番号だけは暗記しているが、妻や父を含め知り合いの携帯電話の番号が分からない。


祖母の文も分からないと言っていた。


なんだか嫌な予感がして、電話に出る文に、家族から携帯電話番号を伝えて貰うように言ってはいたが、翌日の電話では、文はその事を覚えていないようだった。


(物忘れかな、、、、それにしては様子がおかしいような。)


同居が始まってからは、妻の鈴奈が家事のほとんどを担っていた。文はいつも同じ椅子に座ってテレビを見ていたようだ。忙しくて異変に気付けてなかったのかもしれない。


家族に相談しようと思いながら、良は玄関のドアを開けた。













家の中には衝撃的な光景が広がっていた。




引き出しは全て開けられ、中の物が散乱している。



良は強盗でも入ったのかと、驚き奥の部屋へ行く。




一階はどの部屋も荒らされていた。




やけに家の中が蒸し暑い。




良は、窓を開き、電気をつける。





祖母の文が電話台の前で倒れこんでいた。




「御祖母さん。御祖母さん!」





文は顔を紅潮させて、意識がない様子だ。





良は、冷蔵庫から氷を取り出し、文へかけた。




「熱中症か?どうしてこんな事に、、、、」




良は、救急車を呼ぶことにした。




おかしい。こんな事になるまで、誰も気づかないなんて。




父は、、、、



母は、、、、、



妻と息子はどこに、、、、、




『ピンポーーーーン』




その時、インターホンが鳴り響く。




(こんな時に、、、、)




玄関を開いたドアの向こうに立っていたのは、30代の女性だった。




茶色に染めたショートカットのスラリとした女性は名乗った。


「すみません。玉留 麗奈と申します。広一さんと連絡が取れなくて、、、、まあ、どうなさったのですか?」


麗奈と名乗った女性は、自宅の中を見て衝撃を受けていた。

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