第8話 揃わない夕食

「おかえりー。おじいちゃん。」


義父の広一が帰宅すると共に、息子の勇太が走っていった。


「おお。ゆうくん。元気だなあ。」


鈴奈は、夕食の準備をしていた。午後からは2階の段ボールを片づけをしていた。息子の勇太は数個のおもちゃを持って1階と2階を移動し、義祖母の文と遊んだり、鈴奈の所へ帰ってきたりを繰り返していた。


帰ってきた義父の広一は、手を洗い、鞄を片付けると、さっそく勇太と遊び出した。


ソファに座って寛ぎながら、勇太が持っている玩具の剣を受け、大げさに倒れこんでいる。


「きゃきゃきゃ。ジージ。よわーい。」


「ゆうくんは、強いな。すごいぞ。」


鈴奈はほっとしていた。義母は午後から出かけたのか見かける事がない。


義父の広一が勇太と遊んでくれるので、家事が捗っていた。


そこに、夫の良が帰宅する。


「ただいま。すごいな。今日は鰻か。」


ちょうど食卓に夕食を並べた所だった。


義母以外の家族が揃い食事を始めた。


良が言った。

「母さんは?いないの?」


義父が言う。

「京香は退職してから外出する事が増えたからな。どこに行っているのか帰りも遅い。鈴奈さんには申し訳ないな。」


良が言う。

「そうなのだ。母さんが同居に一番賛成していたのに。」


義父が言う。

「今週で私も退職だ。ゆうくん。いっぱいジージと遊ぼうな。」


勇太が嬉しそうに言った。

「うん。ジージいっぱい倒すぞ。」


義父が言う。

「ハハハ。ありがとう良、鈴奈さん。家がにぎやかになってうれしいよ。」


鈴奈は言った。

「いえ、こちらこそありがとうございます。そういえば今日、お祖母さんからお金を頂いたのですが、、、」


義父は言った。

「母さんから?京香からじゃないのか?」


鈴奈は言った。

「ええ、お義母さんからは何も頂いていないです。」


義父は言う。

「おかしいな。京香が退職してからは、食費は京香が持っている筈なのだが、、、」


良が祖母に話しかける。

「御祖母さん。鈴奈にありがとう。」


義祖母は言った。

「いいんだよ。鈴ちゃんが帰って来てくれただけで十分だよ。」


義祖母の言葉を聞き、義父が少し暗い表情をしている事に鈴奈は気が付いた。


(どうしたのだろう?お義父さん。)


その暗い表情は一瞬だけで、すぐに広一は笑った。

「京香へは、私から聞いてみるよ。ありがとう鈴奈さん。美味しかったよ。」


鈴奈は、気のせいだったと思い頷いた。

「どういたしまして。お義父さん。」

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