第69話 借り物

借り物の器に宿って、借り物の足で人生を歩く。仮住まいの今生で、悲しいことが胸に突き刺さり、嬉しいことが胸を満たす。ああ、これが愛と憎しみか。借り物の硬い器では、豊かな感情を受け止め切れない。借り物の命はどこまで続くだろう。全部借り物。全部夢。そんな風に、軽やかに生きていけたなら。

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