第59話 蜻蛉の飛ぶ帰り道

ペダルを漕ぐ帰り道、赤い夕日の中に蜻蛉の群れが光る。こうべを垂れた稲穂の海。微風に乗り、透き通った空を飛ぶ。設計図のない翅脈の模様。誰も知らない複眼の景色。道端に伸びる名もなき雑草の葉先に足をつけて止まる。色も匂いも風の音も記憶の底に眠る。西の空に一番星。あの輝きを目指して走る。

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