第50話 夏みかんの匂い

散歩道に、夏みかんの匂い。どこから香って来るのだろう。背後からか、右手の脇道からか、青い空からか。宝物を探すみたいに、ゆっくり歩いて探す。いつの間にか春の終わり、日差しも強くなった。明るい時間も増えて、夜はまだ先。家々の庭にも空き地の木々にも夏みかんはない。匂いだけが漂っている。

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