第10話 シトロン
夢の中に、シトロンの香り。秘密の箱庭を覗く。女神の光を感じたならば、もうすぐ奇跡が起こるだろう。架空の時間と時計の針。十三番目の暦は巡る。時代という名の船に乗り、細く続く人生を進む。肩の辺りにまだ香る。オレンジ色のシトロンの果実。あれ以来、夢は見ない。遠い思い出。人生のまわり道。
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