第8話 富国強兵
アーク歴1493年 弐の月
リヒタール領
そんなこんなでダンジョンで遊ぶ日々を繰り返し、レベルは2に上がったがステータスの数値はロクに上がらない。
お金も全く稼げていない。
トータル10匹倒して拾ったお金は105ゼニー。
大体1円=1ゼニーと考えていいから…小銭もいいところだ。
そりゃあ誰もこの階層で狩らないわ。
ダンジョンにはいろんな人がいて、中には落ちてるお金やドロップ品を拾う『ハイエナ』と呼ばれて蔑まれている者もいる。
大体は近所の子供や孤児なんかがお小遣い稼ぎにやっていることだが、それすらこのダンジョン1層ではまず見かけない。というかここで狩っている人を他に見かけないのだ。
何故他の人がいないのかをマークスに聞くと、『久遠の塔』はいわゆるインスタンスダンジョンで、同時に入場した人しか中には入れない。
それも同行者と認めた人しか入れないというシステムらしい。
久遠の塔以外にもダンジョンはあり、そちらはノーマルなダンジョンで他人と会う事もあるらしい。
まあどちらが良いかは微妙なラインである。
仲の悪い種族同士が誰も監視している者のいないダンジョンでカチ合うと色々あるだろう。喧嘩で済めばいいが。
ぶっちゃけ久遠の塔1層だとオープンのダンジョンでも狩る人はあんまりいない。その理由は簡単で、経験値もドロップも不味すぎだからだ。
おまけに敵との遭遇率も低く、弱すぎて金にも訓練にもならない。誰がここメインで狩るねんという話になる。
まあ俺は時間の制限もあるしまだまだ弱いのも分かる。
ダンジョン1層以外行けそうにないからまあしょうがない。
もっとサクサクと敵を倒し、ダンジョン深部に進みたい。
でも俺の中で、『自分で稼いだ金』以外で武器を買うのはどうかと思う。
実力に伴った武器じゃないと危ないし。
持てない鋼の剣を振り回そうとしても怪我するだけだろう。
レベル2になって敵を倒すのも少し楽になった気はするけど…まあ、あんまり変わらないというところだ。敵が雑魚過ぎて良く分からんというところもある。
ステータスの伸びがいまいちなのは俺が子供だからなのか?他に理由があるのだろうか?カイトが才能が無いからというのはやめて欲しい。
そういうのは無い…はずだよな?
もっと強くなって2層に行くにはどうすればいいか。
地道にレベルを上げるべきか、武器や防具を整えるべきか。スキルや魔法を修練するべきなのか。
それとも護衛のマークスにパワーレベリングをしてもらうべきなのか…まあパワーレベリングは最後の最後だな。
折角ゲーム世界にきて、まだまだタイムリミットまで時間ありそうなのにそれはどうかなと思う。
でもそうは言いつつ、機会が有ったら引っ張ってもらうのはやぶさかではない。
なんと言ってもパワーレベリングをすれば一気に強くなって、お金も経験値も稼ぎ放題なのだ。
げっへっへ。
装備にカネを積んだり、パワーレベリングをしてもらう以外に強くなれそうな手段はある。
俺の『ギフト』の富国強兵を運用すればよいのだ。
『ギフト』とはいわゆる固有スキルのようなものだ。
KoKというゲームには『ギフト』という特性が設定されている。
前に大人に聞いてこっちでもあることは確認済みだ。
『ギフト』とは武将やいわゆる大名、国主などにゲーム上与えられるチート能力の一つであり、『一騎当千』や『万夫不当』といったものから『勇者』『魔王』『昇竜』『真龍』『天下無双』『臥竜鳳雛』など様々なものがあった。
中には進化したり、遺伝したりするものもある。
…あるいは中の人がダメすぎると退化したり失伝するものもある。
ゲーム内のカイトは内政をして領内を強化すれば自らも強くなる、『富国強兵』と言うギフトだった。
つまり俺が本領を発揮するためには内政をしないといけないのだ。
えーと、領民が増えたらHPが増えて…お金稼いだら攻撃力だっけ?
まあそういう謎システムになっていたと思う。
だから内政して強くなって、それから戦いに…と思ったら先に攻められてフルボッコになるって展開だったな。そうそう、思い出してきた。
ゲーム内のカイトだってあの年までノンビリサボってたわけじゃないと思う。
出来るだけ頑張ってたはず。
つまり俺が普通にやってても、ある程度頑張ってても。
その程度じゃ領地が滅ぶって未来は変えられないってわけだ。
やっぱパワーレベリングに課金装備か?
だがダンジョンでレベルを上げるだけでは限界はありそうだ。
少なくとも自分で戦える程度のプレイヤースキルを確保しなければ…むむむ。
「よし、方針を変えよう」
「方針ですかな?2階層はまだ無理だと思いますぞ?」
「分かってる。そっちじゃない」
2階層以降はコモドオオトカゲみたいなのとか、火を吐く1mくらいの鳥だとか…一気に敵が強くなってくるのだ。難易度がバグってるとしか思えない。
グネグネするだけのミミズにふわふわの毛玉の次の階層がこれかよ。
あんなの子供がソロで狩れるような相手じゃないのだ。
「ダンジョンでは俺はなかなか強くなれそうにない」
「そうですな」
「つまりそれ以外の方法で強くなる。それは…畑仕事だ!」
「…は?」
ステータスを上げるのはちょっと保留。
とりあえずギフトの方から強化できないか試してみよう。
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