No.3 さくらが舞い散る(2)

 一方で男子ショートの結果が公式練習中に判明していた。


 一位が佑李ゆうりくん、二位がイェジュン、三位に蒼生あおいくんが入っているのがわかった。

 衣装を着て滑ってからは一度衣装の最終確認をすることにしたんだ。


 これで最後になるであろう衣装はとても楽しそうなことをしているんだろうと思っている。

 そのときにLINEで誰かがメッセージを挙げられていた。

 それを見ると笑みを浮かべてしまう。


『がんばれ』


 韓国語でイェジュンからそれを送られているのがわかったんだ。

 最終グループの三番目になってリンクに入ってから楽しそうに滑り始めた。


友香ゆかちゃん。もう大丈夫だ」

「はい」


『二十番、金井かねい友香さん、日本』


 そのアナウンスが英語で話しているときに、リンクの中央へ行こうとしていたんだ。

 わたしは演じるアニメの主人公になりきって待つことにしたんだ。

 ポーズを取るとイントロダクションの音楽が流れてくると、タイプライターを使うパントマイムをしてから滑り始めた。


 最初は成功率の高いトリプルループを成功させてから力がこもっていく。

 次のジャンプは足首が強く痛むことが大きいと感じたりしているけれど、繋ぎの振付を丁寧に滑っていく。


 初めて会った少女が上官と共に戦場へと向かうと、それについて彼女は嫌という感情すらない。

 戦うこと、自分が武器だと話すことが大きいと考えている。

 戦場を駆け巡るようなステップシークエンスに跳び蹴りなどが加わっているから、かなりハードなところが大きい。


 そんななかで戦争が終わってからは未帰還兵となっている上官のことを知らずに滑る。


 依頼者たちとの交流で感情を覚えて行ったりしていく過程を表現していく。

 それから勢いに乗せてジャンプを跳んでからは丁寧に滑ろうとしているのが見えた。


 後半のダブルアクセル+ダブルトウループ、トリプルループ+ダブルアクセルのコンビネーションを終えてから最後のジャンプを跳ぶ。

 スピードに乗って勢いをつけてトリプルサルコウ+トリプルトウループ+ダブルループの三連続ジャンプを成功したとき、余計に入っていた力が抜けて滑る重心も正しい位置へと運ぶ。


 でも、心のなかではどこかで生きている、そんなことを考えながら見ている。

 あの別れがあってから「愛してる」がわかってきたと表現する工夫をしているのがあるんだよね。


 それから丁寧に滑ることが見えたりすることが大きいと思う。

 ラストのスピンはポジションを終えてからはうれしそうな笑みを浮かべてポーズをする。

 天井から拍手が反響して多く聞こえてくるのがわかる。


 汗がだらだらと流れてきてからは挨拶をしてからリンクを出ると、次に滑るのが見えたりしているんだ。

 得点が出るまではキス&クライのソファに座って、ティッシュとタオルで汗を拭う。

 わたしは心臓がまだバクバクといっているが、別の緊張感が体に包まれているのがある。


「大丈夫かな、点数」

「大丈夫。ジャンプも出来が良かったし、ルッツとフリップのコンビネーションがない構成だけど、文句なしの演技だったよ」


 BGMで流れていた曲がフェードアウトしてアナウンスが聞こえてきた。


『金井さんの得点、144.55、総合得点218.49。現在の順位は第一位です』


 モニターには得点と順位が表示され、わたしはユラちゃんと僅差で一位になっている。

 ホッとしたときに足首の痛みが襲ってきて、顔をしかめそうになるのを我慢してテレビカメラに手を振ったりしてミックスゾーンへと向かう。


 取材陣のいるコーナーで質問に答えてから、次に中継しているテレビ局のインタビューを受けた。


 もう何度も受けてくれている人だから、安心してインタビューを受けているときに足が痛み始めていた。鎮痛剤を飲んでいても少しズキズキと痛むくらいになっているということは悪化しているかもしれない。


 その後に日本代表のチームドクターに相談することにした。

 足首は少し腫れていて悪化していると断言されて、シーズンオフは休養に当てることにした。


「友香ちゃんもお疲れ様。ごめんな、ケガ悪化させてしまって」

「そんなことはないです。休養することはお知らせを、マネージャーの由井浜ゆいはまさんに言いますね」

「そうやね。お願いします」


 大会にも同伴してくれている由井浜さんはマネジメント会社のマネージャーさんで、ジュニアで大きな大会に出て成績を残し始めた頃にオファーが来て所属とアスリートの一人になった。


 それからしばらくしてすぐに楽しそうな笑顔で滑ることが大きいと感じている。

 すぐに上位三人の控室に行くと韓国代表のキム・ユラちゃんとアメリカ代表のアンジェラ・ユミ・ヨナシロちゃんが手招きをしてハグをしてくれる。


「ユカ、足が痛むの? 引きずってるけど」

「うん、少し前にねんざして……まだ治りきってないんだ」

「それじゃあ、無理はしない方が良いよ。うちだって右足首の古傷が痛むから」


 そのときに流れてきたのはパク・ジヨンちゃんが有名なメロディーに流れてきた。

 もう定番曲として誰かしら使われるけど、最初のジャンプが勢いに乗せて跳んだジャンプを見て驚いた。


 着氷ができずに転倒していたけど、それはサルコウで四回転を跳ぼうとしていたのがわかったんだ。

 そこから立ち上がってからすぐに次のジャンプを滑ろうとしているのが見えて、後から余裕たっぷりのジャンプをしている。


 そこから珍しくテノール歌手の歌声で流れてくるのが聞こえてから、丁寧にステップシークエンスとコレオシークエンスを組み合わせたエレメンツをしている。


 それ以外はノーミスで順位は暫定三位になっているのが見えたけど、難しいと考えていた。

 わたしは子どもの頃には楽しそうなことをしているかもしれないと思っている。


「ジヨン、四回転サルコウにチャレンジしてたんだ」

「それいより。ユカのリンクメイトが怖いのよ~。四大陸で優勝した子よ」

清華せいかちゃんのこと?」

「セイカ! あの子は本当に怖いのよ。グランプリシリーズは来季から出てきそうね」

「うん、そうだね~」


 それから三位のミーリツァ・アレクセイエワちゃんが滑ることになる。


『二十二番、ミーリツァ・アレクセイエワさん、カザフスタン』


 ミーリツァちゃんの演技は少しだけ緊張しているような表情だけど、落ち着いたスケーティングで滑り始めようとしている。

 最初に跳んだのはトリプルアクセルをクリーンに決めてから、トリプルルッツ+トリプルループを跳ぶのが見えてからは余裕のあるジャンプを跳ぶ。


 スケーティング、スピン、ジャンプ、全てのレベルがとても高くてどれだけ練習しているのか気になる。

 スピンも回転スピードが速くて、ジャンプもあっという間に跳び終わっているのがすごい。


 それが清華ちゃんのジャンプが似てきているかもしれないと思っているんだ。


「ミーリツァ、本気の構成だけど」


 さらにトリプルフリップ+シングルオイラー+トリプルサルコウという三連続を最初と最後が両手上げというわけのわからない跳び方をしている。


 そこから点数は暫定一位になって、順位が下がる。

 次の美樹ちゃんの得点は暫定二位、ここで自分の表彰台圏内ではなくなってるのは覚悟している。


 モニター越しからは声援が聞こえてから会場内にアナウンスが聞こえてきた。

 最後の滑走者がリンクに入って演技を始めようとしていた。




『二十四番、一条いちじょう咲良さくらさん、日本』





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