第108話 マジカル☆ミコブラック
ちゃらら、ちゃらら~~ちゃらららっちゃっちゃ~~♪
ちゃらら、ちゃらら~~ちゃらららっちゃっちゃ~~♪
ちゃちゃらちゃ~~らっらちゃ~~らっら、ちゃららっちゃららちゃんっ♪
誰だ 誰だ 誰だ
闇のかなたに踊る影
赤い袴の ミコブラ~~ック
命をかけて 飛び出せば
暗黒魔法 火の玉だ
飛べ 飛べ 飛べ ミコブラ~~ック
行け 行け 行け ミコブラ~~ック
世界は二つ 世界は二つ
おお マジカル~~☆ ミコブラ~~~~クッ!!
主演 謎の少女アルテマ
主題歌
作詞・作曲 斎藤 順
歌 萩野 真琴
監督・撮影 野木 真司
CG制作 木下 佑美
制作『マジカル☆ミコブラック制作委員会』
近日公開予定。
動画を再生してみると、どこかで聞いたことのある粗末な替え歌とともに特撮戦隊ばりのアクションシーン盛りだくさんのOPが流れる。
マジカル☆ミコブラックと名乗る巫女姿の魔法少女が、悪の怪人作業員たちを暗黒魔法を駆使してバッタバッタと倒していく構成で、舞台はこの付近の河川敷になっているようだ。
「な、な、な……なんですか……これは……?」
ヒクヒクと頬をひくつかせ、ワンワナと肩を震わせる偽島。
聞かれたヨウツベはしれっと半笑いで、
「見ての通り我々『マジカル☆ミコブラック制作委員会』が自費制作した特撮動画ですよ。ご覧の動画サイト他、さまざまなコンテンツで同時配信していくつもりですからお暇があればぜひお楽しみ下さい。あ、ちなみに第一話は『襲撃☆不法工事の怪人作業人』となっておりますので」
言いながら偽島たちを撮り続けた。
サブカメとしてぬか娘もスマホを回している。
「ふ、ふざけないで下さいっ!! なにがマジカル☆ミコブラックですか!! こんなもの流して、いったいどういう……」
バカにするなと怒る偽島だが、OP映像をよくよく見ると魔法で吹き飛ばされているのは前回やられた自分たち。
いちおう顔に黒塗り仮面の加工がされているが、それ以外はまんま自分たちの格好だったのですぐにわかった。
使われている魔法や炎もすべて本当に使われた異世界魔法だったが、この映像の中では特殊効果CGとして説明されている。
つまり……これは、
「き、き、き、汚いまねを……」
言いたいことが理解できて、偽島は怒りと悔しさで歯をギリギリと鳴らす。
「この動画は今日の朝方にアップしました。なのでこれ以降、あなたがいくらアルテマさんの魔法を、姿を、異世界人の証拠だとばら撒いたところで、すべては僕のチャンネルの宣伝にしかなりません。それでも撒き散らしたいのならご自由にどうぞ。良い収益にさせてもらいますので」
見るとこの予告動画だけですでに再生回数が万を超えている。
コメント欄には『だれこの子役、可愛くね?』『特殊効果すげえ』『素人でここまで凝った演出するのな狂気』など、なかなかに評判で、当然のことながら誰一人これが本当に起こった事件で、魔法も本物だと夢にも思っていない。
そしてこれからも思うことはないだろう。
これで偽島の持つ証拠映像の価値はゼロになった。
対策を打った。とはこのことだったのだ。
おかげでアルテマたちは夜中まで撮影につきあわされ、最後まで編集していヨウツベはけっきょく一睡もしていない。
「……お……おのれ、おのれ、おのれ……」
濡れた髪の毛からシュウシュと音をたてて顔を赤くする偽島。
ああすればこう、こうすればああ。
ここの連中は何かをするたびすぐさま対抗策を立ち上げて邪魔してくる。
うっとおしいことこの上ない。
「……と、言うことだ。残念だったな小便タレ小僧、くっくっく」
不敵に笑い、憂いることなくアモンの炎を手に宿すアルテマ。
もう怖いものは何もないぞ? と、その顔は余裕に満ちている。
「さっきまでの勝ち誇った顔はどこに行ったクソメガネ?」
六段もその拳に魔法の加護を宿して凄んで見せた。
「……ぐ」
対抗手段を封じられ、脂汗を滲ませ後ずさる偽島。
川に飛び込んでいた作業員たちもそれぞれ上がってきているが、二人の迫力に押され、すでに戦意はないようだ。
みなヤクザまがいのゴロツキや半グレ上がりの連中ばかりだったが、人間同士の喧嘩とはわけが違う。
とくにアルテマからは現代日本人にはない強烈なプレッシャーを感じ、その可愛らしい外見を突き抜けて、恐ろしさすら感じていた。
――――そんなところに、
「……いくら強がっていても、所詮は本物の戦を知らぬ現代日本人よ。俺ら異世界人の放つ殺気の前には子供同然か……」
そうため息を吐き、車から下りてきたのはもう一人の異世界人――クロード。
追い詰められた偽島は、助かったとばかりに彼の元へと逃げ走る。
「すみません九郎さん、計画は失敗に終わりました……。まさかやつらこんな手段を使ってくるとは思いもよりませんでしたので……。申し訳ないですが、部下が避難するまで奴らを引き付けておいてくれませんか……?」
「クロード、だ。……いいだろう。……そもそも俺は貴様の計略などあてにはしていない。俺はただあの女を……アルテマの首を持ち帰りたいだけよ」
そして両手に灯すラグエルの光。
ここに、アルテマVSクロード。第二戦の膜が切って落とされようとしていた。
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