第3話 幼馴染ヒロインといると羨ましがられる (?)

 幼馴染ヒロインの美味しい朝ごはんを噛み締めながら情報収集。


 おかげで一番知りたいコイツのことが分かった。

 名前は、楠木祐。

 高校2年生。父親の単身赴任に母親がついていった形で両親は家には不在。また、兄妹もいない。実質一人暮らしの少年。

 容姿は一見地味そうなモブ系男子。しかし、髪を切ればイケメンと主人公の王道系だ。

 髪を切るタイミングも今後の視野に入れないとな……。



 次に幼馴染ヒロイン。

 柚城優菜ゆずしろゆうな。父親は単身赴任中。母親と二人暮らし。お隣で何かと俺の世話を焼いてくれる典型的な幼馴染ヒロイン。


 祐、優菜ともにありきたりな名前だし、まだどの世界に転生してきたかは分かってはいない。


 まあ美少女と関われる世界ならどこでもいいけどな!


「ゆーくん行くよ〜」

「ちょっと待って! ……よし、今行く〜!」


 外でゆーちゃんが待っていてくれている。朝ごはんを作ってからの一緒の登校は毎日のルーティーンらしい。


 羨ましい生活しやがって! まあこれからは俺が堪能するがな、ハッハッハッ!



 学校には15分程度で着いた。

 ゆーちゃんとはクラスも一緒らしい。席を教えてもらい、横にバッグを掛けていると、前の席の男子が話しかけてきた。

 

「お、おはよう祐?」

「お、おはよう……えーと」


 な、名前がわかんねぇ……。


「祐? ハッ、お前もしや……」


 え、なに? もしかして中身違うのバレた——


「なんか変な薬でも飲んでおかしくなったのか?」

「は?」


 突拍子もない質問に思わずそんな声が出る。


「俺は正常だ」


 中身は違うけど。


「お前の発言の方が変だろ」

「だってお前、最近まで……いや、なんでもない。でもいいのか?」

「何が?」


 祐の友達らしき男子は小声で、


柚城ゆずしろさんと居て」

「あ? 幼馴染なんだから当たり前だろ。それに彼女も毎日のルーティーンとか言ってたぞ」

「………」


 なんだこの友達は。真面目な顔で聞いてきたり、難しいそうな顔をしたり、


「祐。やっぱりさ——」

「ゆーくん、お友達と何話してるの?」

「ひっ」

「ん? ああ、ゆーちゃん」


 ニコニコと可愛らしい笑みを浮かべたゆーちゃんがいた。

 友達が悲鳴らしきものを上げた気がしたが気のせいだろう。


「ゆーちゃんのこと話していたんだよ」

「へぇ、私のこと?」

「ああ、ゆーちゃん可愛いねって」

「っ! もう、ゆーくんってば」


 顔を赤く染めて嬉しそうにしている。可愛い、可愛い。


 こんな最高な幼馴染と関わらないとか損すぎでしょ!!


「おい、祐……ほんと今日のお前はどうしたんだよ」


 未だにそんなことを言う友達。


 何かあるのか……?  ははーん、もしやコイツ、幼馴染ヒロインを狙っているのか? 隙をつくらせて一気に奪うつもりかもしれない。そういうエロゲあったし。

 でも奪うための作戦というよりか、心配している感じなんなよなぁ。


 とりあえず、なにか安心させる言葉でもかけるか。


 今度は俺が友達だけに聞こえるように小声で言う。


「俺は大丈夫だ。ゆーちゃんのことも。心配かけて悪いな」

「ま、まあ祐がそうならいいけど……」


 そうこうしているうちに朝のホームルームの時間に。


 俺は次にどんなことを頼もうかで頭がいっぱいであった。

   

 幼馴染が何やら怪しい瞳を向けていると知らずに。



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