あなたをダダあまに甘やかす銀髪ロングヘアメイド
山城京(yamasiro kei)
第1話 美味しい晩ごはん
あなたはサラリーマンとして日々激務をこなしています。休日もろくにないまま、家に帰ればコンビニで購入した弁当を食べて寝るだけの日々。
疲れ切った身体はやがて精神を蝕み、このままでは明日の電車に飛び込んでしまうのでないか、というところまできていました。
カンカン。あなたは金属音を鳴らしながら安アパートのボロい階段を上っていきます。手にはいつものコンビニで購入した598円のハンバーグ弁当とお酒が入ったレジ袋が握られています。
あなたはポケットから鍵を取り出して、自分の城へと帰ります。しかし変です。誰もいないはずの部屋に電気がついています。
家を出る時に消し忘れたのか、と考えたあなたは靴を脱ぎ、リビングへと行きます。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「え……」
あなたは思わず手にしたレジ袋を落としそうになりました。それもそのはず、誰もいないはずの我が家に、銀髪ロングヘアメイドが佇んでいたからです。
「君は、誰?」
「私はご主人様にご奉仕するために訪れたメイドです」
そう言って美しく一礼をして見せたメイドさんにあなたは面食らいます。
普通であれば不法侵入として警察に突き出すところですが、日々の激務に疲れ切ってしまっていたあなたは、「そういうものか」と受け入れました。
「夕食の準備が出来ていますが、先にお風呂になさいますか?」
「お腹すいたから先にご飯にしようかな。あ、でも、コンビニで弁当買ってきちゃった」
「そちらは私がいただきます。ご主人様には栄養のあるお食事をしていただきたいですから」
と、いう事であなたはメイドさんと食卓を囲む事になりました。
食卓にはあなたの大好物であるハンバーグとシーザーサラダが並んでいます。付け合せのポテトも出来たてホカホカで、美味しそうな匂いが湯気と共に上っています。
「いただきます」
「はい。召し上がれ」
待ちきれなかったあなたはハンバーグを箸で食べやすいサイズに切って口に運びます。
濃厚な野菜ソースの旨味が口で爆発しました。あまりの美味しさに、あなたは無意識の内に歯を動かします。途端、噛み締めたハンバーグから口いっぱいに肉汁がほとばしります。
「お、美味しい!」
あなたは思わずそう言って口に白米をいっぱい放り込みます。傍から見ると、あなたはリスのようになっていました。そんな様子を見たメイドさんはクスクスと笑みを浮かべます。
「ご飯は逃げませんよ。落ち着いて食べてください」
「美味しい……美味しいなあ……」
「……泣いてらっしゃるのですか?」
久しく食べる事のなかった誰かの手作り料理に、あなたは涙を流しています。それほどまでにメイドさんの作ってくれた料理はあなたの冷めきった心を温めてくれたのです。
「辛かったのですね。大丈夫ですよ、ここにはあなたを攻撃する人はいません。安心して心を休めてください」
メイドさんは立ち上がり、あなたを優しく抱きしめてくれました。押し付けられた彼女の大きな胸の奥から、メイドさんの柔らかな心音が聞こえてきます。
トクントクン。彼女の胸の音を聴いていると、あなたの凝り固まった心の氷が解けていきます。
上司からの無茶振り、終わらない仕事、追われるスケジュール。そうしたストレスはどこかへ飛んでいきました。
あなたは子供に戻ったかのように無邪気な笑顔を浮かべて大好物のハンバーグを頬張っていきます。そんな様子をメイドさんは柔らかな笑顔を浮かべながら見ていました。
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