竹崎くんの家(仮)

 今回は「これしかないな・・・」と判断してこのタイトルにした。

 そして、以下は所々ぼかしているので、あくまでも都市伝説として読んで欲しい。



 話をしてくれた福田さん(仮)の地元には、『竹崎くんの家』と呼ばれる密かな心霊スポットがある。無論、上記の“ 竹崎 ”というのも仮名である。


 このスポットのことでネット検索をかけたり、近隣の人に話を聞いてみたりすると


「むかし、竹崎一家がそこで壮絶な一家心中をした」


「戦前、竹崎さんという方が突如、夜逃げした家。土地の権利関係が複雑すぎて残っている」


「かつて、地元で竹崎くんという子が失踪したとき、病んだ家族がこどもの持ち物だけを置いて引っ越していった廃屋」


 ・・・などなど、いつからそこに何故そんな家があるのか、出自が統一されていないのだ。ただ、廃屋の名前が『竹崎くんの家』であることと、『行けばナニカ出る心霊スポット』ということだけが共通している。





 真偽はともかく、『行けばナニカ出る』というのなら・・・。

 そんな軽い気持ちで、福田さんが友人の佐藤さん(仮)とその『竹崎くんの家』に探検しにいったときのこと。


 当時彼らが聞いた噂は

「夜中、表に表札がないとき、家の奥にある仏壇から『竹崎』の表札を持ってきてかけると、ナニカが起こる」

「逆に表札が表にあったなら、そこから家の奥の仏壇に持っていくと・・・」

 というものだった。



 意気込んでいた彼らは、噂通りのルートをたどって件の廃屋にたどり着く。

 そこで早速、表を確認すると表札はなかった。


 そのまま懐中電灯の明かりをたよりに、建物のなかを突き進んでいった。


 このとき、福田さんが先陣を切っていたのだが、後ろをついてきている佐藤さんがこんなことを口にした。


「なあ、ここって本当に表札があるのかな?」


 なにを馬鹿な。それを確かめに来ているようなものじゃないか。

 福田さんの思いはよそに、佐藤さんは話を続ける。



「なんだか違う気がするんだ」

「『竹崎』って表札ねぇ~」















「ここ、『福田くんの家』って呼んだ方がよくないか?」


 後ろにいる佐藤くんの、ふざけている訳でもない、あっけらかんとした口調で発したその言葉に頭が真っ白になり、思わず立ち止まってしまった。







「ああ、いいな」

「しっくりくるね」


 前方の暗闇から、複数の佐藤くんの声がそう答えた。


 福田さんはそこで佐藤くんを置いて帰った。





 後日、なんともない様子の佐藤くんと顔を合わせた。

 そして、彼はあの日のことを全く口にしなかった。代わりに開口一番に出たのは


「なあ、福田、おまえんち行っていいか?」


 心なしか、それからの彼は、妙に福田さんの家にあがりたがるようになった。


 それとなく理由をつけて佐藤くんの要望を断っていくうちに、疎遠になっていったという。





「後ろと前から佐藤の声がしたとき、訳が分からなすぎて、体が動かせなかったんですよ」


「でもね、このままいるとヤバいと思って逃げたんですよね」








 このままいたら、この家の『本当の名前』を聞かされるぞって。


 あそこがどうしてああなったのかは知らないし、これは勘ですが、あそこに『竹崎くんの家』って最初に名前をつけた奴、絶対にろくでもないモノですよ。





 福田くんはそんな話をしてくれた。

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