第47話

 僕の体に温かい力が流し込まれ、全身を蝕んでいた強烈な痛みも消える。


「ふー」

 

 一瞬にして傷が無くなった僕はゆっくりと立ち上がり、万能感に揺れる己を諌め、ダグラスの方へと視線を向ける。


「なッ!?なんだ!?」

 

 僕の前に立っている


『大丈夫……?』

 

 頭の中に女性の声が聞こえてくる。


「あぁ、大丈夫だ」

 

 僕はその女性の声に答える。

 

『良かった……』

 

 女性の声、僕の頭の中に響いてくる聖剣の安堵したような声。

 聖剣とはかつての聖女が魂を剣に捧げたことで出来上がった剣であり、聖剣の中には未だに聖女の意思が残っている。

 聖女の意思が持ち主の魂に自分の魂を捧げることで持ち主に絶大な力を授ける。

 

 ゲームだと、勇者の裏ルートとして存在している魔王を超える相手である邪神と戦う際に勇者に魂をつなげることで勝利している。

 

 僕はあえて自分の作戦に隙を作り、ダグラスをここに呼びつけて、絶体絶命の危機を作ることで罪悪感に苛まれていた聖剣に僕を助けたいと思わせて、僕に自分の魂を捧げるように誘導した。

 僕が聖剣の力を獲得し、ダグラスを殺す。

 これが僕の作戦である。

  

 いやぁー。思ったよりもダグラスが強くてビビったよね。

 念の為に幾つもの魔道具を持っていたけど、それでもなおうまく行かずに殺されるんじゃないかと思ったもん。


『ごめんなさい……私はあなたの人生に


「勝手に人の人生に影を落としたって言うなし。僕にとってマキナと出会い、ともに居れることは何よりも尊いものなんだよ。だから、そんな贔屓目に感じることはないよ……


「な、何を一人で話している……?」

 

 僕の前にいるダグラスが一人でブツブツと話している僕を見て変な物を見るかのような視線をぶつけてくる。


「あぁ、ごめんごめん」

 

 ゲームでも勇者は自分にしか聞こえない聖剣の声と会話していたため、周りの人間から奇異なものを見るかのような視線を向けられていたことを思い出す。


「当然君のことは忘れていないとも」

 

 僕は臨戦態勢へと移り……それを見て呆然としていたダグラスも慌てて臨戦態勢へと入る。


「僕もクソ雑魚のままでは居られないからね……さて、と。再戦と行こうか?さっきまでの僕とは何もかもが違うよ?」

 

 僕は聖なる力に満ち溢れ、光り輝いている聖剣をダグラスへと向けた。

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