里依紗の話②
半年前ー
由貴の赤ちゃんが産まれた。
「おめでとう」
明子と千里も一緒に、お祝いを持って由貴の家に来ていた。
「オムツケーキ助かるわ!ありがとう」
三人とも、オムツケーキを持ってきていた。
由貴は、昔から私をライバル視していた。
私が、クラスのNo.1の男の子と付き合ったら、自分は後輩のクラスのNo.1の子と付き合った!
同じものを欲しがり、同じ男を好きになられた。
そして、悪口まで言われて男を奪われた事もあった。
そんな関係でありながらも、腐れ縁で楽だからって理由と、明子と千里が好きだからって理由で、いまだに友情関係を続けていた。
「一番最初に結婚したのは、里依紗なのに、私達が先にママになってごめんね」
由貴は、嫌みったらしくそう言って笑った。
「まだ、新婚だもんね」
「でもさ、不妊治療した方が早く出来るよ」
「そうそう、私も半年で出来たよ」
「私も一年かからなかった」
私は、不妊治療で1000万使った従姉妹がいた。
彼女は、一度も妊娠する事なく閉経を迎えた。
だから、この治療をすれば出来るという理論には反対だった。
「ストレスなくしたら、出来るらしいよ」
「私の知り合いも治療やめたら、出来たんだよ」
「だから、里依紗も出来るよ」
「早めに治療しなよ」
「そうだね」
苛々していた!
「里依紗、抱いて!赤ちゃん」
「私も」
「私も」
おまけに三人の赤ちゃんを抱かされた。
腐ってると言われてもいい。
私は、本当に苛々していた。
可愛くないと思ったし、みんなが大嫌いだった。
「じゃあ、また集まろうね」
「じゃあね」
駅前で、別れてせいせいしていた。
一杯飲み屋さんに、入った。
お酒は弱いけど、ビールを一杯だけ飲み干した。
タクシーにわざと乗って家に帰ってきた。
いや、クラクラしてたからだ。
ガチャン…
「おかえり」
譲が、玄関に立っていた。
「ただいまー」
「里依紗、酔ってる?」
つぶらな瞳が、私を見つめていた。
「ちょっとね」
私は、リビングに入った。
「もう寝たら?」
鞄や服を脱ぎ散らかしていくのを譲は、集めながら歩いた。
冷蔵庫のビールを取り出した。
私は、グビグビとそれを飲む。
「里依紗、やめなよ」
「私だって、赤ちゃん欲しいよぉぉぉぉぉ」
「はい、はい」
譲は、私を抱き締めてくれた。
髪を優しく撫でてくれた。
「ちゃんと排卵してるよ!ちゃんと調べたもん!」
「うん」
「譲が、精子がうっすいんじゃないの」
「里依紗」
「じゃなかったら、妊娠しない理由なんてないじゃん。おかしいじゃん」
「そうかもな」
譲の目が、潤んでる気がしていた。
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