第5は令和のおっさんに昭和の子供服はキツイ



 未練だった初恋が終わり一週間が過ぎた。

 

 いまだに天宮とは会話できていない。話しかけようとすると緑さんか真由美さんの後ろに隠れてしまってどうにも避けられてしまいる。

 緑さんたちがしばらくすれば大丈夫だと言ってくれるが、少し寂しい。これが孫に嫌われる祖父の気分なのだろうか。


 今は過去に戻ってなんとか暮らしていけるといった具合だ。

 覚えていなかったのだがタイムリープした時代は小学一年生の五月の頭だった。

 友達ができる期間だったので精神が四十代になって性格が変わったことに気づくのはあまりいなかった。知っている子達もなんか変わったと首を傾げるくらいで済んだことにはホッとしている。・・・もしかすると俺の性格は子供の頃から成長していないのかもしれない。グスン。


 勉強は一年生で落ちぶれることはなかった。ひらがなの書き方や足し算で間違えていたら三國志の武将みたいに憤死しただろう。小学生の間はまあ大丈夫だ。

 

 人間関係、勉強関連は大丈夫なのだが困ったことが浮上してきた。

 令和から昭和のタイムリープするということはかなりきつかった。

 スマホ?まず携帯無いし家には黒電話でしたよ。(令和でも現役)、ネットゲーム?田舎には超有名な家庭用ゲーム機でさえありませんよ。ボードゲームかトランプ、外で遊ぶくらいか。

 日々が過ぎるにつれて令和の時代の物の便利が恋しくなってくる。

 ネットが無いからテレビを見ようとするがリモコン無しのブラウン管、つまみでチャンネルと音量変更仕様。懐かしいよりも不便さにイライラしてしまう。

 漫画?最終回までのストーリー全部知っているのを娯楽にできるほど悟れません。

 

 うん地獄。

 今まで慣れ親しんだものが全てグレードダウンされるのがこんなキツイとは思わなかった。

 娯楽関係は無理。今さら虫取りや鬼ごっこは精神が死ぬ。

 仕方ないので勉強と肉体強化に費やそうと思う。少しは効率のいい方法は知っているのでやりがいはあるかもしれない。


 大体の現状の問題点は出たのだが最も優先的にどうにかしなければならないことがある。

それは服だ。


 1980年代の頃、子供は風の子と言われていた。冬にTシャツ短パンの男の子はかなりいた。俺は寒かったので長ズボンをはいていたが。

 シャツはまだいいダサいがその時代でにあったものである。

 ただ短パンは絶対にダメだ。

 ホットパンツというものがあるだろう、あれを昭和の子供の頃は男の子がはいていたのだ。過去に戻って同級生の男子が短パンをはいているのを見たときの何と言っていいものか。体育座りしている同級生の息子さんがコンニチワしているのを見てタイムリープしたことを初めて後悔した。


 そのくらい昭和の子供服が嫌だった。

 それならどうするか、自分で作るしかないだろう。

 前世(でいいのか?)の私の趣味の一つが裁縫だ。さすがに売り物レベルは無理だが古着を使えばマシなものは作れる。


「かーちゃん、いらない服を頂戴」

「何に使うの?」

「んー気に入らないから自分でズボンを作る。あ、ミシンも借りる」

「待ちなさーい!」


 こんなやり取りの後、母の監視の元に裁縫することは許可された。

 母は縫製会社に勤めていたので途中からは母に作ってもらったが、さすが本職あっという間に五着も作り上げてくれた。


「え、何それ貴くん」

「母が作ってくれましたカッコいいでしょう!」

 

 次の日の登校時、胸を張って緑さんに応えた。


「う~んいいね!」

「でしょう!」


 真津美さんは評価してくれた。


 自慢したくて次の日には作ってきたものをはいてきたのだ。

 それはハーフパンツ、ひざ丈の短パンだ。私が型紙を作って、プロの母が縫ったので中々良いものが出来た。

 昭和の時代には無かったものである。少なくとも田舎の方でははいている人は見たことは無い。

 奇異の目で見られるかもしれないが知らん、息子がコンニチワするよりマシだ。


「都ちゃんはどうです。似合ってますか?」

 

 聞くと少し慌てた後、天宮はコクンと頷いてくれた。

 それだけで嬉しいと思ってしまうのは好きだった相手だからだろうか。


「やはり女の子に褒められるのは嬉しいですね。他にも数着作ったので次に着てきた時にみてもらえますか?」


 更に次の約束をする。どうも天宮は恥ずかしくて会話が出来ないようなのでこちらから次に繋げるように話す。


「…うん」


 天宮は迷ったようだが約束してくれた。

 そのあと後は色々話して興味を持ったようなことを掘り下げていった。なんか若い頃に合コンで女性相手に必死に気を引こうとしていたことを思い出す。

 おっと今の方が若いのか。


 天宮も慣れてきたのか少しずつ話してくれるようになった。服には興味がある、宿題が難しいなど一年生らしい会話だった。


 これ以降、登校時には天宮と話しながら行くことになるのだが、上級生の二人は生暖かい笑顔で私たちを見守っていた。


 言っておくが俺はロリコンではない。



ーーーーーーー

息子がこんにちはの短パンは何だったですかね。

同級生は年間を通して短パンでした。流石に上級生になったら冬は長ズボンになりましたが。

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