第24話

「一旦、保護する?」

と、妥協できそうなことを晶は言ってみた。

今、母親のことや小鬼のことを言っても家族に混乱をもたらすだけだ。

「動物病院に相談してみようよ」と、援軍のように華子は言った。

「放っておくのもかわいそうよね」と、ウメも言うと、しばし間を置いて父は頭を掻いて承諾した。

「しかし随分、汚れてるなぁ」と、ため息混じりに言うと父はそっと子猫をすくい上げ、ネルシャツの胸ポケットに入れた。

 そして、父は急ぎ足で「動物病院に行ってくる」と言い残し、風のように去っった。

 至極積極的な父の行動に呆気に取られ、皆しばしその場に立ち尽くしてしまった。

「可愛いと思ってたのかな」

「みたいね」


 家へ着いてしばらくすると、父はタオルにくるんだ子猫を抱えて病院から戻って来た。

 子猫は「ニャーニャー」と、力強く鳴き、毛はフワフワになっている。父曰く、動物病院で体を洗ってもらい、少しミルクみたいなものを与えてもらったら、生まれ変わったように元気になったのだとか。

 リビングのカーペットに子猫を下ろすと早速歩き回っている。小さいながらも、少し目を離すとあっという間に部屋の端まで移動している。

 父が始めに動物病院へ連れて行ったのは大正解だった。ミルクやキャットフードも動物病院で買って来てくれたから一先ず安心だ。

 父は新聞紙とティッシュの箱で手作りの猫用トイレを作ると、しばらくこれで凌ごうと皆に伝えた。

 夜、子猫はソファでテレビを見る父の体によじ登り、うなじとシャツの間の隙間に忍び込んで休んだ。

 父は娘が出かけることもすっかり忘れ、子猫と寛いでいる。

 晶は風呂上がりに、ダイニングから父と子猫のそんな様子を見ていた。こんなに父が幸せそうにしているのを見るのは、いつぶりだろうと思った。

 



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