(二)-10

 そう言って母は曲がった腰を伸ばして見せた。昔と違って背中は完全に伸びきるところまでは伸ばせていなかった。畑仕事をして前屈みになることが多いせいもあるので、しかたがないか。

 そうして西山さんと母は挨拶を交わし、他の訪問者の人のことなど、世間話を少ししていた。

 その間俺は、周囲の景色を見ていた。母の畑、そして道路を挟んだ向こうも元々うちのものだった。片方は田んぼで、今は干し草を束ねて干してあった。もう片方は完全に荒れていた。

 母との世間話が終わり、俺は西山さんと一緒に家に戻った。そして玄関先で俺の携帯のメールアドレスを紙に書いて渡した。

 西山さんは「夜になってしまいますけど」と断りを入れたが、弁護士や老人ホームを紹介してくれることを約束してくれた。


(続く)

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