第2部

第1章 伯爵になったアレクの日常

第165話 その後の王国とアレク伯爵!?

その後の出来事を話していきたいと思う。

王都そして各領地は、甚大な被害と死者を出した。再建が行われる前に、まずは死者の弔いが行われ、王都には死者の名前が刻まれた石碑が建てられた。これは弔いとともに、この悲惨な出来事を未来永劫忘れさられないようにする為である。そして多くの人が、石碑の前に集まり花を供えたり、この戦いでの被害者家族のすすり泣く姿が暫く続いたのである。

それから、復興も始まり土木作業に従事していない冒険者や騎士団や街のあらゆる住人も手伝い着実に復興が進められた。

この戦いで唯一よかったことは、一致団結して共に手を取り合おうという人々の優しさや強さであろう。


そして、アレクは陛下から依頼を受けてポーションの製造を任されていた。各地で怪我人があとが絶えずポーションが不足してしまい、仕方なく依頼を受けているのだ。


トントントン


「は~い!どちら様ですか?」


「ファビロです」


「どうぞ、入ってください」


オールバックのまだ20代半ばの男が入ってくる。


「アレク伯爵様宛に手紙が届いております」


「ファビロ、伯爵はやめてよ。器じゃないし、まだ叙任式を行なってないんだからさ」


アレクは、椅子に腰掛けながらファビロにやめてくれと恥ずかしそうに言う。


「何をおっしゃいますか!アレク様は王国を救った英雄の一人ですよ。それに正式に陛下から書状が届いてるではありませんか」


そうなのだ。今回の功績を称えて伯爵の地位と王都に屋敷を貰ったのだ。ちなみに、ファビロは陛下が用意してくれた執事である。


「はいはい。わかったよ。それで手紙には何が書かれていたの?」


「王印が捺されておりましたので、確認はしておりません。こちらになります」


アレクは、手紙を受け取り中身を確認する。そして、面倒くさそうな顔をするのであった。


「もうファビロが、あんなこと言うから叙任式と晩餐会の案内状だったじゃないか!はぁ~面倒くさいな」


「やっとこの日が来たのですね。ファビロ、一生アレク様にお仕え致します」


ファビロは、やっとこの日が来たかと感動に打ちひしがれていた。


「はいはい!ファビロよろしくね。それよりポーションの件はどうなってるの?正直もう作るの疲れたんだけど」


肩を揉みながら疲れたアピールをするアレク。


「あ!そうでした。その件につきましては依頼完了とのことです。後は各地のポーション職人達が備蓄を作り始めているとのことです」


「そっか、やっと解放されるんだね。疲れたぁぁぁぁ。そろそろストレン領に帰りたいんだけど問題ないよね?」


「はい!お帰りになられるなら今しかございません。叙任式が終わり次第、各領地から領主様自らアレク様を訪ねて参られると思います」


「あぁ...確かに...って俺まだ13歳だよね?なんでこんなに忙しいんだろう...トホホ」


以前に、復興したらアレクに感謝を述べに行くという文面の手紙が何通も送られてきていたのだ。それを思い出したアレクはゾッとするのであった。そして、復興が行われて1年が経ち、アレクは13歳を迎えていたのだ。


「あ!ファビロ、叙任式が終わって色々落ち着いたらヘルミーナと正式に結婚するから式の予定とか色々お願いできるかな?ヘルミーナには直接伝えるからさ」


「はい!畏まりました。準備を進めさせて頂きます」


「あと、領地とか貰うことになるのかな?領地経営とか正直面倒くさすぎて嫌なんだけど」


領地を豊かにするとか絶対無理だと考えるアレク。もし、領地なんか貰ったら発狂しちゃうよと思うのであった。


「今のところ法衣貴族扱いになっておりますが、陛下がアレク様を利用しないとは言い難いですね」


法衣貴族とは領地を持たない貴族のことである。


「はぁぁ...だよね。ちゃんと依頼料、それもかなりの代金を払ってくれるから断るに断れないんだよね。しかも、相手は国の最高権力者だし...それに、今回の伯爵の件も断ろうとしたけど、宰相様が直接来てこの功績で断ろうものなら、この先誰にも爵位を与えられないし、叙爵される側も断るしかなくなってしまうって泣きつかれたら、断ることなんかできないよね」


「でもその通りなんですから受け入れて下さい。それより泣き言は、これくらいにしてストレン領に向かわれてはいかがですか?あちらで数日過ごせば気も晴れるでしょう。いない間の屋敷の管理は私めにお任せ下さい」


「そうだね。じゃあちょっとストレン領に行ってくるよ。いない間、屋敷をよろしく」


そう言って転移をするアレクを、ファビロは笑顔で手を振って見送るのであった。

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