第7話 マザーへの手紙

 親愛なるマザーへ。


 マザーと最後に会ってから、もう十年近く経ちましたね。私にとってこの十年はとても長く感じましたが、マザーにとっては昨日の出来事なのかな?

 日本での生活もだいぶ慣れてきて、眼のほうも手術してからはちゃんと視えているよ。マザーが私の背中をあのとき押してくれなかったら、きっといま頃、絶望に打ちひしがれていると思う。だから、私はいまとっても感謝しています。本当にありがとうございます。


 去年マザーから届いた手紙に書いてあった、マーゴッドが看護師になりたくて勉強している件はどうなったのかな。あの子、きっといまでも表向きは真面目に振舞っているけど、一旦部屋に入るとだらけ癖があるから、一度ノックせずに覗いてみてね。きっと寝ている振りをするわ。

 カトリーナは彼女の本国のチリに私みたいに戻ったんだよね。彼女とは、マザーの手紙に書いてあったアドレスに去年電子メールを送って、いまではフェイスブックっていうものを通じて、時々連絡を取り合っているよ。ただ、彼女の住んでいる地域ではパソコンがまだ主流じゃないみたいで、文字を直接パソコンに打つのが苦手みたい。教会に置いてあったタイプライターと同じものを使って文字を打ってからパソコンに打ち込むから、すっごく時間がかかるの。現代っ子なのか古いのかわからないね。


 これで最後になるけど、今年はもしかしたらスペインに旅行で行けるかもしれません。どうかそのときまでお体を大切にね。行くときになったら、また連絡します。


 フミより。

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