第6話 ヴィスタを取り戻せ
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
【登場人物】
[サンダー・パーマー=ウラズマリー]
金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。
サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。
遺伝子能力養成学校高等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。
▼ヴィスタ診療所
[ヴィスタ]
医星で医者をしている若い女性。
[バリス・スピア]
医星で医者をしている青年。
目つきがとても悪い。
▼その他
[セリナ]
プラズマの幼馴染の女の子。
勤勉で真面目な性格。氷の能力を操る。
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
~貧民街区・廃ビル~
「お前達の診療所を潰して、神立が研星会の上に立つ!!」
ジェラデックはタガ―ナイフを両手に持ち、プラズマ達に対して構えた。
「トーレ様がお前ら貧民街区の人間にもあの女にも、医薬品なんてやるわけないのにな!!」
ヴィスタの想いを踏みにじられた気がしたのか、バリスは拳を握りしめている。
「てめぇ……!!!」
そしてジェラデックの言葉に反応したのはバリスだけではなかった。
怒りの形相を浮かべたカースはジェラデックに近づこうとする。
「おい!ヴィスタちゃんには手を出さないって言っただろうが!!」
しかしジェラデックは右手を開いて突き出し、カースを制止させた。
「手はな。遺伝子能力や煉術は使わないとは言ってないだろう?」
「ガキみてぇなこと言いやがって……!」
その言葉に言い返すようにジェラデックが挑発する。
「お前達貧民街区の者に義賊のまね事はできない。今回の件のニュースを見た本物の大怪盗が来るのを願っているんだな。」
「てめぇ……義賊のまね事だと……?」
カースはまんまと挑発に乗り今にも詰め寄りそうな様子だった。
しかしそんなのはお構いなしにジェラデックがさらに続ける。
「ただでさえ
「争いはより深い対立構造を生む。それによって困るのは市民たちだ。お前達貧民街区の人間も含めてな。」
「だから私がこの医星の民を救う。」
「思い上がんじゃじぇねぞ……!」
バリスは奥歯を噛みしめ、そう言葉を絞り出した。
そしてプラズマがバリスの左前へと歩み出で、力強くバリスに続く。
「そうだそうだ!俺達だってこの星を救ってやるよ!!」
「ほぉ……ならどこまでできるか見せてみろ!!」
ジェラデックはプラズマに向かってタガ―ナイフを勢いよく投げた。
プラズマは顔を動かしタガ―ナイフを躱すと、ジェラデックに向かって駆け出す。
「いくぞ!バリス!!」
プラズマが駆けだした瞬間、バリスが首から下げていたアクセサリーの鎖が斜め左前方向に引っ張られた。
駆け出したプラズマの左肩付近の背中に鋭い痛みが走る。
「痛ってっ………!?」
プラズマが痛みのもとに視線を向けると、背中にあったのは先ほどジェラデックが投げたタガ―ナイフだった。
「なん…で……?」
「磁力の能力だろう……ナイフを中心に金属類が引き寄せられてた。」
タガ―ナイフの軌道、自身のアクセサリーの鎖部分のみがナイフの方向に引っ張られていたことから、バリスはそう考察した。
「ご名答。さすがは【猛毒】のスピア先生。」
「幸い深く刺さってない。抜くぞ。」
バリスは勢いよくプラズマに刺さったナイフを引き抜いた。
「痛てっ!“せーの!”とか言えよバリス!!」
プラズマの能天気なやり取りを気にも留めず、ジェラデックは目に見えない鞭のようにタガーナイフを振り回している。
再度ジェラデックがタガーナイフをプラズマ達に向かって投げるが、すんでのところでプラズマ達はナイフを躱す。
「あぶねぇっ!これじゃ近寄れねぇぞ!?」
その時プラズマ達の背後から、巨大な鉄球がナイフと一緒に勢いよくジェラデックに向かっていく。
飛んでいく巨大な鉄球はジェラデックの手前で地に落ちると勢いそのままに転がっていった。
ジェラデックの横を通り過ぎた鉄球は彼の背後の廃ビルの壁に衝突し、轟音とともに砂埃を巻き起こす。
「これでも引き寄せられるか!?」
巨大な鉄球はカースが放ったものだった。
「ヴィスタちゃんに手を出してるってんなら話は違ってくる。あの
「自身に引き寄せることができるということは……お前達に跳ね返すこともできるということだ!」
ジェラデックの背後の壁に衝突した鉄球が彼を通り越し、カースの方へと高速で向かっていく。
「カース!!」
「なら、俺とは能力の相性がいいな。」
カースは両手を前に掲げると、遺伝子能力を発動させた。
たちまち鉄球は液体状になってカースの両手に吸い込まれていく。
「バリス!あいつがナイフを引き寄せ始めたら俺が鉄球をぶつける!」
「そう上手くいくかな?」
ジェラデックは不敵に笑うと、再度タガーナイフを投げた。
プラズマ達はナイフを躱して戻って来るナイフと鉄球に備えている。
「ほら!もういっちょいくぜ!避けろよお前ら!!」
そしてカースが引き寄せられるナイフに向かって鉄球を放つ。
先程と違って、鉄球とナイフは落ちることなくジェラデックへと猛スピードで向かっていく。
「あいつ、能力を解除しないのか!?」
予想外の反応にカースは声を上げた。
するとジェラデックの目の前に円状の液体が彼を守る盾のように発生した。
「なんだあれ!?鉄が!!」
液体の盾に触れた鉄球とナイフは瞬く間に消滅していった。
「なんでも溶かす歯魚の沼だ。」
「さて、次はなんだ?」
ジェラデックはカースに向かって挑発するように手招きしている。
「なら次はこのサンダー・パーマーウラズマリー様が相手だ!!」
「ウラズマリー……?なるほど、お前がトーレ様が気にかけている……」
「おらっ!!」
プラズマが右手を振りかぶって勢いよく振り下ろすと、ジェラデックに向かって高速の電撃が放たれた。
「よっしゃ直撃だ!」
電撃によってジェラデックの着衣は黒く焦げるが、彼自身に効いている様子はない。
「速いな……だが威力がまるでない。」
「しかし……なんだろうなお前の電撃は……心が乱される。」
「まだまだいくぜ!!」
プラズマは連続して電撃を放つが、ジェラデックは素早く躱しながら攻撃態勢を整えている。
そしてジェラデックは横移動を続けながら火球を放った。
しかし、電撃化して高速移動するプラズマには当たるはずもない。
「もういっちょ!」
ジェラデックは再度プラズマが放った電撃を躱す………はずだった。
彼は足元に撒かれた液体に足を取られ、電撃を躱し損ねたのだ。
「プラズマの電撃ばっか見てるからだ。」
バリスはしてやったりの笑みを浮かべている。
しかし、やはりジェラデックにダメージはない。
「全く……ダメージこそないが調子の狂う電撃だ………」
「これはどうだ?」
ジェラデックを中心として薄紫色の光を放つ円陣が地面に浮かび上がる。
円陣はどんどんと広がり、プラズマ達をもその範囲内に収めた。
「遺伝子能力が……使えない!?」
「さて、今や電撃も毒も鉄もない。純粋な強さ比べといこうじゃないか。」
そう言ってジェラデックは左半身でプラズマ達との間合いを詰めていく。
近づいてくるジェラデックに対しカースが勢いよく殴り掛かった。
「大振りだな。」
カースの左顎にきれいなカウンターフックが入る。
続いて飛び込んできたプラズマに前蹴りを繰り出すが、プラズマは蹴りを両手で受け止めた。
そしてジェラデックの軸足を掴むと股下に潜り込み、彼を肩に担ぎあげた。
「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
プラズマは大声と共に持ち上げたジェラデックを地面へと叩きつける。
しかしジェラデックはプラズマの襟元を掴み、叩きつけられるとともに彼を引き倒し、逆にプラスマを蹴って巴投げのように投げ飛ばした。
「野郎っ……!」
プラズマはすぐに立ち上がると再度ジェラデックへと向かっていく。
ジェラデックは勢いよく向かってくるプラズマにカウンターの要領で鋭い蹴りを浴びせた。
プラズマを蹴り飛ばしたジェラデックだが、その手ごたえのなさに対して悟ったように微笑する。
「なるほど……お前らには俺の能力の効果が薄いか……」
彼の言う通り、プラズマに大したダメージは見られない。
「ならばお前らに用はない。ここは引かせてもらうとしよう。」
ジェラデックは上部に設置されている窓に火球を打ち込み割ると、懐から銃を取り出しその窓へと向ける。
彼が引き金を引くと銃口からワイヤーが射出され、窓の縁にひっかかった。
再度引き金を引くとジェラデックは上部の窓へと上昇していく。
そして彼は1枚の紙を投げ捨てた。
「これはご褒美だ。クエストクリアには報酬がつきものだろう?」
その紙を拾い上げたバリスは、そこに書いてあるものを読み上げる。
「
「もうあの
そう残してジェラデックは廃ビルの窓から飛び出した。
「なんだったんだ、あいつ……?」
ジェラデックが姿を消すとバリスは頭を抱えた。
「クソっ、無能力者のヴィスタを人質にして、俺を屈服させようってわけか……!」
「そうすりゃ、俺達の診療所を潰せる……!」
「貧民街区の奴らに薬品強盗をさせて俺を引き出し、その間にヴィスタをさらう……」
「してやられた……」
「バリス、こうなったのは俺にも責任がある。俺がそこまで連れていく。」
カースは窓の外に見えるボロいトラック型車両を親指で差し示した。
「陸上型で辿り着けんだろうな……!?」
「いいから早く乗れ。ヴィスタちゃんが心配だ。」
To be continued.....
【EXTRA STORY】
~医星・医街区貧民街区行トンネル前~
「おや、サルヴァトールさん!今日も取材だったのかい?」
「えぇ、貧民街区はネタの宝庫ですからね。」
「気をつけた方がいい。あっちはスラム街だ。」
「ご忠告どうもありがとうございます。でも今日で取材は終わりです。」
「面白いネタが#と__・__#れましたから。」
「このネタを最後に、また何か違う仕事をしようかと思ってましてね。」
「そうだなぁ……政府軍の大尉なんていいかもなぁ。かっこいいでしょう?」
「あ、あぁ……なんで大尉?」
To be continued to NEXT EXTRA STORY.....?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます