第9話 My Geneに導かれて

 

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【登場人物】


 ▼遺伝子能力養成学校高等部3年生


 [サンダー・パーマー=ウラズマリー]

 金髪の活発な青年。電撃系の能力を持つ。

 サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。

 結構なバカ。


 [セリナ]

 プラズマの幼馴染の女の子。

 勤勉で真面目な性格。氷の能力を操る。


 [ルーノ・スクラブ]

 プラズマのクラスメイト。

 プラズマが幼馴染、美人師匠に囲まれていることを妬んでいる。

 セリナ曰く“プラズマの周りを飛びたがる衛星というか虫みたいなもの”らしい。



 ▼プラズマ周辺者


 [アリス・ジア]

 電撃の能力を持つ女性で、プラズマの師匠。

 男勝りな性格。


 [レオン・アイシー]

 氷の能力を持つ男性で、セリナの師匠。



 ▼プラズマを狙う影


 [ウィンド]

 プラズマを狙う緑髪の青年。

 ギリア、バリーと行動を共にする。


 [ギリア]

 アリスと対峙した男。空間を作用させ物を吸い込むような能力を持つ。


 [バリー]

 アリスと対峙した男。岩の能力者。



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煉術れんじゅつ試験会場~



――不合格――



一番聞きたくなかったその結果に、プラズマはその場にうなだれていた。


「俺……卒業できないのか………」



「プラズマ………」

駆け寄ったセリナもなんと声をかけていいか逡巡している様子だった。



項垂うなだれるプラズマに、立ち合い責任者である学校長のイヴ・パラムが声をかける。


「卒業試験を落としたようですね。煉術れんじゅつ習得で卒業できないのは、この学校始まって以来初めてのことです。」


「そりゃそうだよな………おれ……」



プラズマの言葉を遮り、学校長は続けた。

「学校を卒業するには、条件3つの内、どれか1つ以上を満たす必要があります。」


「み、3つ……?」



「1つ目は煉術れんじゅつの基唱。これが一番修得しやすいため、皆これを卒業の達成条件として目指すこととなります。」


「2つ目は、政府軍付属の能力養成学校に所属している学生の中で、軍内の階級を得ているもの。」



「そして最後が………」



AGISエイジス使であること。」


AGISエイジス?」


「分かりやすくいうなら、一時的にあなたの遺伝子能力が、あなたに同調している状態です。」


「同調………?」


「あなた、セリナさんを助けるときに体が電撃に変わったでしょう?」

プラズマは自身の身体に電撃がまとわれたのを思い出した。


「あれがAGISエイジス。」


「エ、エイジス……?」

プラズマの困惑した表情に、学校長はセリナに顔を向けた。


「あら?これ授業でやってないのかしら?」


学校長が授業内容に懸念を示すと、セリナが呆れたように答える。

「習ってますよ……こいつは寝てただけです……」



「とにかく、あなたは学校始まって以来初のAGISエイジス修得による卒業者です。」


「よって卒業できます。」





「や………」


「やったーーー!!!」


「しかし、卒業後1週間は煉術れんじゅつの補習を受けてもらいます。


「えーーーー!!!」



「それとパーマー君……少しお話が。」






~一週間後~



 学校の正門前に、両手を大きく上げて伸びをしながら歩く男子生徒と、ニコニコと嬉しそうに隣を歩く女子生徒がいた。


「やっと卒業だ~。」


「よかったじゃない。無事卒業できて。」



卒業後の補習を終えたプラズマは今日正式に高等部を卒業したのだった。


その事実を師匠に伝えるため、アリスの家に向かっている途中だったのだ。

嬉々とするプラズマの手には、卒業証書、能力使用許可証、そして………


宇宙へと飛び立つための星間せいかんパスポートが。


「これでやっと宇宙に出れるぜ!」


「はいはい、そんなにはしゃいでたらなくすよ?」

 喜びのあまり拳を上げてジャンプするプラズマをセリナは嬉しそうに忠告している。






~アリス自宅前~



「あれ?今日はアリスが待ち構えてない……?」

 

いつもなら修行場にアリスが仁王立ちで待ち構えているはずなのだが……



「おーい!アリス!?」


 待ち構えてない時は、プラズマが帰ったのを察知するや、自宅から飛び出て来て手荒な歓迎があるのだが………それもない。


 それどころか返事すらない。



 修行場に併設されているアリスの家の玄関を、恐る恐るゆっくりと開けてみる。



 パーン

 パーーン



「おめでとう!プラズマ君!」


 クラッカーを持ち、パーティー用のとんがり帽を被ったレオンとアリス。


 そしてもう1人、二人よりも頭一つ分くらい背の低い少女が立っていた。


 肩まで伸びる薄い金髪のボサボサ頭。華奢な身体に鋭い目つき。

 どこか見覚えのある少女だった。


 プラズマはその少女の名前を確認するように呼んだ。

「あれ?お前もしかして……メルツィア??」


「あたりまえでしょ!あたし以外に誰がいんのよ!」

 メルツィアと呼ばれる少女はプイっとそっぽを向く。


「いやだって、前にあった時は中等部入りたてだったし……!なんか背伸びてるし……!」

 プラズマは慌てて弁明をするが、それが余計にメルツィアを怒らせてしまう。


「あのね、女の子ってのは変化が早いの!ほんとこれだからバカ電気は!」


「メルツィア、その辺にしてやれ、何を言ってもそいつのバカは治らん。」

 アリスがメルツィアを抑える。


仲裁に入るように、とんがり帽を被ったレオンが間に入った。


「ほんとにこの姉妹は2人揃ってツンデレだな。アリスなんか卒業試験のとき、“プラズマが落ちたらどうしよう”って泣いて……ごふっっ」


 全てを言い終える前にレオンのみぞおちにアリスの重いパンチがはいる。


「今のはレオンさんが悪いですよ。」

セリナは自身の師匠を見下ろして呆れたようにそう言った。



「それでお前これからどうするんだ?高等部行くのか?」

 アリスは、“く”の字にダウンするレオンを傍目に殴った右手をさすっている。



「おれ、星を出るよ!」


「そんでいつか『My Geneマイジーン』を見つける!」


「あいつ……あの風のやつが言ってた。争いを消すためには万能遺伝子が必要だって。」

 プラズマはいつになく真剣な顔だった。



――俺はいつかMy Geneを見つけるのが夢なんだ――


――この世の悲しみと憎しみを――


ルーノの言葉がプラズマを後押ししたのも間違いなかった。

彼らの話から、My Geneと呼ばれる万能遺伝子が世界から悲しみや憎しみを消し去ることができる力。


今回の一件を経て、プラズマの中でMy Geneを探し求めることが自身の大きな目標となっていたのだ。



 そしてセリナは不安そうに目を細め、プラズマを見つめている。

「『My Geneマイジーン』ね……」


「それに……たくさんの人を助けないといけないって心の奥で感じるんだ。」


「だから、宇宙を回って人助けをしたい。」



「そうか……残念だったなメルツィア。大好きなプラズマが星に残れば高等部で会えてたのかもしれ……ごふっっ」

 全てを言い終える前にレオンのみぞおちにメルツィアの拳がめり込んだ。


「反……抗期か……?」

 レオンは再度“く”の字にダウンした。


「うっさい!」

 メルツィアは顔を真っ赤にしてまたそっぽを向く。


「レオンさん……あんまりこの姉妹をからかうと死んじゃいますよ……?」

セリナは“く”の字に倒れる師匠に手を差し出した。



「じゃぁ不出来な弟子は近いうちに旅立つわけか。邪魔者がいなくなってせいせいするよ。」

 アリスは鬱陶しそうに“しっし”と手を振った。


「アリス、ありがとう。」



「気味が悪いからやめてくれ。」

 アリスはプラズマに背を向ける。


「こっちこそ………ありがとよ。」




 レオンが背を向けた姉妹の顔を覗き込む。

「お前達泣いて……ごふっっ」


 全てを言い終える前にレオンの顔面に姉妹の拳がめり込んだ。



「うるっさい!!!!!」




To be continue.....





【EXTRA STORY】


~アリス自宅~


「おいレオン!とんがり帽なんてガキじゃあるまいし!」


「アリス、プラズマはとんがり帽子でお祝いされるのが好きなんだ。」


「お前がそこまで頼むんなら……し、仕方ねぇな……」


「(いや、頼んでないけども。)」



「ちょ、ちょっとレオンさん!クラッカーなんて子供っぽいもの……!」


「メルツィア。プラズマは派手なお祝いは喜ぶと思うぞ?」


「全く……お祝いだから仕方なくよ!?」



「(この姉妹……チョロいな)」



To be continued to next EXTRA STORY.....?



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