ファイナルファンタジー対ゼノブレイド 失われた20年
■胎動
FF6完成後、キャラクターを3Dで描画するためにFF6のキャラクターを使った技術デモが作られた
高橋哲哉にとってFFのグラフィックディレクターとしての最後の仕事だった
高橋は現在では当たり前になっているリアルタイムレンダリングによるマップの描画を促すために北瀬佳範と野村哲也とは違う道を行くことを決断した
そして、ここからゼノシリーズの歴史が動き出す
2Dでマップが描画された時代からJRPGを作り続けてきた高橋はキャラクターの描画を重視する北瀬・野村と決別、スクウェアから独立後もマップの描画を重視するスタンスを貫きオープンワールドの開発体制を着実に積み重ねていく
高橋は後にJRPGを作り続ける理由を「神の視点に立ちたい」「世界のすべてを作ってみたい」からと答えている
FFは3Dによる技術革新でJRPGの未来を切り開いたが坂口博信というカリスマを失い迷走、エニックスと合併したスクウェアは他社との開発競争に敗れていく
その間も高橋はスタンスを崩すことなく競争力を育み、ついにJRPGが失った20年を仕切り直すスタートラインに立った
■零落
FFが落ちぶれてしまったのはなぜか?
時代や組織としての問題もあるかもしれないがゲームとしての問題に絞れば四つある
その四つの問題がFFとゼノブレイドとの間に決定的な差を生んだ
・I
シングルプレイヤーのFFにおいて、マップがカットシーンとカットシーンの間にしかたなく移動する場所になっている
マップがゲームとして機能していないためイベントの終わったマップへ戻るインセンティブがない
・II
定義を誤解したままオープンワールドを作った
オープンワールドについては後で詳しく述べる
・III
3DRPGのバトルがどうあるべきかということをほとんど考えなかったので、3Dアクションゲームのバトルを剽窃しなければゲームとして成り立たなくなった
3DRPGのバトルがどうあるべきかについては別のページ( https://kakuyomu.jp/works/16817139557071857395/episodes/16817139557072367539 )に前述しているので参照されたし
・IV
FFはファンタジーなので写実的にする必要は全く無いにも関わらずグラフィックをフォトリアルにすることに固執し続け時間と予算を浪費した
写実的でなければ高品質ではないと思い違いをしているが幻想的であることと高品質であることは両立できる
■誤謬
ゼノブレイドのオープンワールドはまだ完全ではない
日本語圏ではオープンワールドの定義が混沌としている
この混沌と世界最先端のゲーム大国だった日本が欧米や中国に技術で追い抜かれたことは無関係ではない
専用機が主流の国内と違いPCが主流だった海外はFPSなどの3Dを巧みに用いたゲームの成長が国内より速かった
それがオープンワールドの発明を促しSkyrimやWitcher 3などへつながっていく
日本がオープンワールドを発明する可能性がなにも無かったわけではない
オープンワールドを構成する要素は大きくシームレスとノンリニアに分かれる
3Dのゲームを最も上手くシームレスにしたのは他でもない64時代の任天堂であり、他の国内メーカーもそれに追随することで幾つものゲームがシームレスになった
ゼノブレイドもその系譜に連なるがそれらはどれもノンリニアではない
日本はノンリニアのゲームを生み出せないのか?
そうではないことをやはり任天堂は証明している
任天堂はBotWにおいて完全なオープンワールドを達成し、欧米や中国に追い抜かれた技術の差を既に埋めている
そして、スクウェアはロマンシング サ・ガや聖剣伝説LOMのフリーシナリオ(石井浩一が発案し、河津秋敏がプロデュースした作品で用いられた)でオープンワールドが発明される前から実はノンリニアを達成している
しかし、スクウェアのゲーム開発者はフリーシナリオの重要性に気づくことはなかった
スクウェアのゲーム開発者がなし遂げられなかったオープンワールドの夢を叶えることができるのは高橋哲哉をおいて他にない
■諦観
国内のヘヴィユーザーの間には国産ゲームは海外のハイエンドゲームと競わなくてよく、日本の独自性を貫けば海外で評価されるという言説がありペルソナ5やNieR:Automataのような成功例も生まれている
しかし、このような言説は日本が競争力を失ったことを正当化し現実から目を背けているようにも聞こえる
PCゲームの市場が小さい国内でオープンワールドを作るのは難しい
Witcher 3を作ったCD Projektよりはるかに巨大な企業が優秀なゲーム開発者を囲って作らせているのが世界最先端のオープンワールドではなくルートボックスから排出される萌えキャラなのである
日本のゲーム史に名を残すレジェンドクリエイターは海外のゲーム開発者のように海賊版PCゲームを遊んでクリエイティビティを育んだ
スマホを使いこなせてもゲームが作れるようにはならない
スマホがPCゲームの普及を阻み、若いゲーム開発者の芽を潰し、国産ゲームを世界最先端から遠ざけている
90年代まではゲームのグローバルスタンダードは専用機でありゲーム開発の主流は日本だった
しかし、今やグローバルスタンダードはPCであり日本はゲーム開発の主流ではない
FortniteやApexの流行で国内でも若年層の間でPCゲームが普及し始めているが専用機の影響が強い国内のヘヴィユーザーはまだ現実が見えていない
JRPGのユーザーであるほど専用機の影響は根深い
DQが開発競争から降りなければJRPGにはまだ可能性があった
DQがサザエさんやドラえもんのようなコンテンツになったことでDQの影響下にある全てのJRPGの未来が決まった
ゼノシリーズはDQと同じ道を行くのか、しがらみを断ち切って開発競争を続けるか、ゼノブレイド3がJRPGにとってターニングポイントになるのは避けられない
またJRPGが海外のハイエンドゲームと渡り合うにはヘヴィユーザーだけでなくゲームメディアも変わらないといけないかもしれない
ヘヴィユーザーと同様にライトユーザーの存在も重要
DQやポケモンは普段ゲームを遊ばないライトユーザーを取り込んで社会現象を起こしたが現在のライトユーザーはアプリゲームに掌握されている
ライトユーザーがいなければJRPGはヘヴィユーザーの娯楽で終わる
かつてのDQやFFのように国民的などと呼ばれることはないだろう
そして、JRPGにとって最もクリティカルな問題はユーザーがプロの作るコンテンツを楽しまなくなったということ
現在ユーザーを楽しませているのはYouTuberやInstagrammerなどのインフルエンサーであり、外側に広がりを持たせアマチュアが気軽に二次創作を行なえるようにしたユーザージェネレイテッド・コンテンツがヒットしている
JRPGにポジティブな感情を抱くのは日に日に難しくなっている
しかし、開発競争を諦めずBotWやELDEN RINGのような海外のハイエンドゲームに匹敵するゲームを生み出した日本人は本物のゲーム開発者だろう
厳密にはBotWやELDEN RINGはRPGではないがゼノブレイド3がそのような偉大なゲームに連なることを祈るしかない
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