娘が人助けをした件


 雨ですよ。朝から豪雨です。今頃になってきて、少し空が明るくなってきましたけれども。今日は離任式でした。二女の担任の先生が離任されるということで、クラス委員長、最初で最後の仕事、花束渡しをしてきました。


 クールな二女は、先生とのお別れも「ふーん」って感じ。どうせ、クラス替えで、先生変わるんだし。仕方ないよねって感じ。クールすぎる。けれども、ちゃんと昨日はお手紙を書いていました。「おら、外ではいい子だから」だって。怖い。担任の先生、うちの子のことをすごくかわいがってくれていまして、いつもべた褒めです。なのに、うちの子ときたら。世の中怖いっす。表の顔と裏の顔があるんだな。小学生も。


 そして昨日の話。仕事をしていると中学校から電話が。ヤツめ。またなにかやらかしたか。20万弱の借金どうするつもりだ、って思いながら電話に出ると、相手は学年主任の先生。


「お宅のお子さんが、先ほど橋から飛び降りようとした女性を助けたようで、警察の方にお話し聞かれています。動揺しているかもしれませんので、一応、ご連絡です」


 だって。えー。どういうことだよ。驚きです。こっちも動揺してしまうわ。で、数十分後に二女の携帯から電話(長女はスマホないですからね)。相手は長女です。かなり興奮した様子でことの顛末を話してくれました。まあ、まとめると以下の通り。


 部活帰りにいつもの橋を渡っていこうとすると、バスケ部の子たちが集まってわーわーしていたそうです。なんだろうって、友人と後輩と通り過ぎようとしたところ、どうやら、橋の欄干を乗り越えて、外に出て、フェンスにしがみついている女性がいたとのこと。薄着で、50代くらいの人だったといいます。


 彼女に話しかけている男性もいたそうで。一度は通り過ぎた娘たち。けれども、振り返ってみると、彼女はまだフェンスにしがみついたまま。「ああ、あの人、きっと死にたくないんだろうな」って思ったそうです。で、戻って、わーわーしている野次馬のバスケ部の男子たちを「うるせえ」って追い払い(これは娘の友人)、三人で「上ってきませんか?」と声をかけたんですって。


 男性の声には反応しなかった女性も、娘たちの声掛けに顔を上げたそうで、「あ、これは大丈夫」と思い、三人で引き上げるのを手伝ったそうです。で、通りかかった女性とおばあちゃんにお願いをして警察に連絡。警察の人が来てくれて、女性は無事保護された、というわけ。


 警察が来る間、用事がある友達は帰宅。娘と後輩ちゃんと二人で付き添っていると、彼女は何度も「ごめんね」といったそうで。「私が早く飛び降りればあなたたちに迷惑かけなかったのにね」って言ったそうです。娘は「余計なことしたのかな」って帰ってきてから言っていましたが、いいんです。どんなことがあっても死んじゃダメよ。命は大事。死にたい人がいても、救うのは当然のことって言ってやりました。


 それに、あんな真昼間から、人通りの多い橋で自殺しようとするなんて、きっと彼女の中にも迷いがあったり、止めてもらいたい気持ちがあったりしたのだと思うんです。いいのです。


「おら、人が目の前で死ぬのはごめんだからね」って笑っていましたけど。よくやったとほめてやりました。ただ、自分がまきこまれる場合もあるわけだし、よくよく注意をするように言い渡しました。


 職場では「これで携帯代はチャラですか」って言われましたけど。これはこれ。それはそれ。金は返せよ!



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