3-34話
円形の石壁に囲まれた巨大な
沸き上がる歓声に罵声や野次が混じるのは、金を賭けているからだろう。
観客に囲まれた試合場で、鎧を着た
鎧の上から殴っているから、一見すると大したダメージに見えない。だけどガントレットに鋭い突起があるから、殴るだけで鎧が凹むし。格闘系スキルを使っているから、さらにダメージは跳ね上がる。
命懸けで戦う
闘技場が帝都の観光スポットだから、みんなを誘ったのは嘘じゃない。だけど俺は
「
試合を眺めるジェシカは
だけど大抵の冒険者は武器や魔法で戦うから、殴り合いだと同クラスの
「ジェシカの見立ては正しいと思うわ。だけど今試合に出ているのはランク外の
エリスはロナウディア王国に戻るまで帝都の大学に留学していたから、
飲み物を飲みながら観戦していると、突然大きな歓声が上がる。どうやら上位の
先に登場したのは身長二mを超える髭面の巨漢。横幅もあって重戦車って感じだ。
続いて登場した対戦相手は一八○cmくらいの長髪の男だ。
「
魔導具で拡声したアナウンスに煽られて、客たちが次々と金を賭けていく。賭け率で考えれば、巨漢のドーガの方が圧倒的に有利ってことだな。
試合が始まると、先に仕掛けたのは『疾風』マックスだ。跳躍しながらスキルを発動。風属性のスキルでブースターのように加速。一気に距離を詰めると、体重乗せた拳を叩き込む。『疾風』マックスの続けざま連打に、『破壊王』ドーガは防戦一方だ。金属同士がぶつかる激しい音が響き渡る。
だけど『
マックスはそのまま地面に叩きつけられて動かなくなった。
「勝者、『破壊王』ドーガ!」
客たちがドーガの名を叫んで沸き上がる。ドーガは右手をかざして歓声に応える。
倒れているマックスはヘルメットがひしゃげているけど、
ドーガとマックスの試合が今日のメインイベントだったらしく、試合が終わると今日勝者になった
アナウンスの声が勝者を順番に称えると、客たちが再び歓声を上げる。最後にドーガを称えると、一層大きな歓声が上がる。
それが収まったタイミングて、アナウンスの声が続ける。
「それでは、これよりエキジビションマッチを開催する! 『破壊王』ドーガに挑戦する者はいないか! 挑戦料は銀貨一枚。ドーガを倒せば賞金は金貨一○○枚! 腕に自信がある奴は、試合場に降りて来い!」
アナウンスの声が客たちを煽る。これも興業の一貫で、挑戦料を取るのは冷やかしで挑戦する客への対策だろう。
「じゃあ、ちょっと行ってくるよ」
「「え……」」
ミリアとノエルの声が重なる。他のみんなも戸惑っているけど。
「アリウス、本当にやるつもりなのね?」
エリスが悪戯っぽく笑う。
「ああ。今回は派手に注目を集めた方が良いだろう」
観客席から試合場に飛び降りると、
『
今の俺はレベルを二五、ステータスは適当にそれっぽく設定している。ちなみに格好は襟付きのシャツ一枚にズボンと靴。学院にいるときのよう眼鏡を掛けている。
「兄ちゃん、挑戦料は払えるんだろうな?」
俺が銀貨を投げると、職員がニヤリと笑う。ドーガの強さを引き立たせるだけの馬鹿が挑戦して来たと思っているんだろう。
「俺を倒そうってんだ。おまえは竜騎士派か、それとも只の馬鹿か?」
ドーガが両腕をクロスするように構える。相手が素人でも油断しないのは評価できるな。
「いや、俺はそんなんじゃなくて。あんたに恨みはないし、こっちの都合で利用するのは悪いと思っているんだ。だから先に謝っておくよ」
「おまえ、何を――」
薄笑いを浮かべるドーガとの距離を一瞬で詰めて、反応する前に拳を叩き込む。ドーガは派手に吹き飛んで、背中から観客席の壁に叩きつけられる。勿論、殺さないように手加減したけど。白目を剥いたドーガが立ち上がるのは無理だろう。
俺の狙いは
証拠の方は後でドミニクを失脚させるときに使うつもりだけど、これだけじゃ蜥蜴の尻尾きりをされたら終わりだ。それよりも今はドミニクを煽るために利用させて貰う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます