第342話:蟻の女王

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 体長20mを超える『殺人女王蟻キラークイーンアント』。災害指定種の魔物『殺人蟻キラーアント』を無数に産み出す、災害の元凶のような奴だ。


 だけど『殺人女王蟻』自体は、巨体が生み出すパワーはあるけど。異様に膨れ上がった腹のせいで動きが鈍いから。800レベルを超えている割に、そこまで凶悪な魔物じゃない。


 シンディー、ギジェット、ケイナの特級狩人ハンター3人が、正面から『殺人女王蟻』と戦っている傍らで。


「『身体強化フィジカルビルド』『飛行フライ』『加速ブースト』『短距離転移ディメンジョンムーブ』!」


 支援魔法を連発したミリアが、『殺人女王蟻』の背後に転移して。魔力を集束させた一撃を入れる。ミリアの魔力操作の精度なら、『殺人女王蟻』の身体を貫くのは容易い。身体を深く切り裂かれた『殺人女王蟻』が金属音のような叫び声を上げる。


「ミリア。てめえも、やるじゃねえか!」


「私だって、アリウスに魔力操作を教えて貰ったんだから。これくらいできて当然よ」


「私も負けていられませんね」


 ヨハンは空中を駆け抜けて、禍々しい巨大な戦斧を叩き込む。こいつも普段と戦っているときのギャップが大きいよな。


 特級狩人3人に、ミリアとヨハンが参戦しているし。俺の出番はない気がするけど。シンディーに一緒に戦うと言った手前。一応、戦っておくか。


 みんなの戦闘の邪魔をするをつもりはないから。俺は5人の攻撃の合間に、『殺人女王蟻』との間合いを詰めると。異様に膨れ上がった腹に、拳を叩き込む。


 拳の衝撃波が巨大なの腹を破裂させて、汚い花火に変える。


「はあ? アリウス、てめえ……今、何をしやがった!」


 シンディーだけじゃなくて。ケイナとギジェットも唖然としている。ミリアとヨハンは当然って顔をしているけど。


「普通に殴っただけだよ。シンディー、おまえにも見えていただろう」


 今度はゆっくり殴った。普通に見える速度で。魔力も込めていないし。当たる瞬間に俺のSTRで襲撃を与えただけだ。

 腹の中の卵が飛び散って孵化しないように。衝撃波で全部潰した。


 それでも『殺人女王蟻』は生きている。こいつの生命力は侮れないな。だけど、あとは任せることにするか。


 それから10分ほどで。5人の攻撃によって、『殺人女王蟻』は完全に動かなくなった。


「何だよ。結局、アリウスは化物ってだけで。どれくらいつええのか、全然解らねえじゃねえか」


 シンディーが文句を言うけど。


「そうか? アリウスは『殺人女王蟻』の腹を素手で破裂させて。『死神大グリムリーパーセ蜈蚣ンチピード』を瞬殺したんだ。シンディーはこれ以上、何を見たいって言うんだ?」


 ケイナが煙草を咥えて、疲れた顔をする。ギジェットもお手上げって感じだけど。


「いや、もっとアリウスの実力を実感してえって言うか。てめえら、何で解んねえんだ?」


「だったらアリウスと戦ってみるしかないんじゃない。ねえ、アリウス。シンディーの相手をしてあげれば?」


 エリスが言う。そう言えば、シンディーと戦ったことはなかったな。初めて会ったときも、ヨハンとシンディーの喧嘩を止めて。それで話が収まったから。


「そうだな……アリウス。てめえと一度拳をぶつけねえことには、全然実感が沸かねえぜ」


 シンディーはやる気満々だ。


「ねえ、シンディー。一応、忠告しておくけど。貴方みたいに痛い目を見ないと解らない性格だと。アリウスと戦ったら、立ち直れないかも知れないわよ。アリウスの強さは私たちと、文字通りに次元が違うから」


 ジェシカは親切心で言っているんだけど。


「ジェシカの姉御あねご。幾ら姉御でも、それは聞き捨てならねえな……あたしの鋼鉄の精神は、負けたくらいで折れねえぜ」


 シンディーの目から瞳孔が消える。もう止めても無駄だろう。


 俺とシンディーは正面から対峙する。シンディーも一応女子だから、痛めつけるつもりはないけど。ここで余計なことを言うと、火に油を注ぐだけだからな。


「じゃあ……行くぜ!」


 シンディーが魔力を集中して、動き出そうとした瞬間。俺はシンディーが反応できない速度で動いて。頬に掠めないギリギリの距離で拳を撃ち抜く。


 それでも衝撃波だけで、シンディーの身体は吹き飛ぶところだけど。その場で無傷で立っているのは、俺が『絶対防壁アブソリュートシールド』でシンディを包み込んだからだ。


「シンディー。まだ続けるのか?」


「あ、当たりめえだろう……」


 シンディーは呆然としていたけど。唇を噛み切って、痛みで戦意を取り戻す。だけど、そこまでだった。


 次はさらに威力と速度を増した拳を振り抜く。彼方に突き抜けた衝撃波が、轟音を立てる。シンディは震えながら、その場に崩れ落ちる。


「シンディー、悪かったな。ちょっとやり過ぎたよ」


 まあ、こいつを慰めるのは俺の役目じゃなくて。


「おい、シンディー。立てるか?」


 ケイナが肩を貸して、どうにかシンディーを立ち上がらせる。


 それでも、一応立ち上がれた訳だし。ジェシカは心配していたけど。シンディーはこれで懲りるような奴じゃないと思うよ。


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