3 新しい助手と新しいクエスト
第30話
3ー1 もしかして
工業ギルドから戻ってすぐに降りだした雨は、それから3日後も振り続いていた。
ジェイムズさんいわく、これは季節雨なのだという。
この雨があがれば、季節は、いよいよ夏なのだという。
日本でいうところの梅雨みたいなものか?
わたしは、屋敷に閉じ込められてうんざりしていた。
屋敷の中は、昼間でも薄暗く気持ちじめついていて憂鬱になる。
せっかく雨が止んだら半日休暇をとってライナス先生の治療院へと出かけるつもりだったのにな。
実は、あの後、ライナス先生から手紙がきたのだ。
その手紙は、立て板に水のような流麗な文章だったが、要約すると彼のやっている治療院に見学にこないかというようなことが書かれていた。
うん。
この娯楽の少ない世界だからな。
わたしは、軽い気持ちでお誘いを受けることにした。
何しろ、あの人は、目の保養になるし。
まあ、少し距離感がおかしいけどな。
というわけでちょっと見物がてら行ってみようと思っていたのだが、あいにくの雨続きで出かける気にもならないし。
わたしは、ご主人様の様子をみつつ窓辺で振り続けている雨を眺めていた。
ご主人様も退屈中のようだったがご主人様とわたしでは、盛り上がる話の種もないしな。
だいたいこの世界は、娯楽が少なすぎるんだよ!
わたしは、ご主人様の部屋の窓際に腰かけてため息をついた。
なんか面白いことないかなぁ。
「3回目だな」
不意にご主人様が言ったのでわたしは、なんのことかと思った。
ご主人様は、ベッドの上からわたしの方を見てにやっと意地悪く笑った。
「どうやらトガーは、退屈しているらしいな」
ああ?
わたしは、ふん、と鼻を鳴らした。
「何もすることがないので」
「だから、雨が止むのを待って若い男のところに遊びに行くというわけか?」
ご主人様がわたしに訊ねた。
なんでこの人が知ってるわけ?
わたしは、ぴん、ときた。
ジェイムズさんだ。
やつがわたしの情報をこいつに売っているんだな。
「遊びに行くわけじゃないですよ。社会見学ですから」
わたしが言うとご主人様は、ふん、とそっぽを向く。
「そんなこと言ってるとなんか、焼きもちやいてるみたいですよ、ご主人様」
わたしは、仕返しに少しご主人様をからかうことにした。
「もしかしてわたしのこと、好きなんですか?」
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