第19話

 2ー2 あくまでも相談です。


 確かに、わたしもそれはうすうす理解していた。

 だって、普段わたしが食べている食事だってマジでひどいもんだからな。

 最初は、嫌がらせなのかとか思ってしまったけど、どうやらこれがこの世界では普通なのらしい。

 ゲンナリしてしまう。

 まあ、5千歩譲って我々健常者はいいとしよう。

 だが、ご主人様にはしっかりと栄養をとってほしい。

 そこでわたしは、屋敷の料理人であるサラさんに相談することにしたのだ。

 サラさんは、40代の小柄だが恰幅のいい女性だ。

 ルゥいわくドワーフという種族であり、ドワーフはこの世界ではなんにおいても小器用にこなす職人気質で有名なのらしい。

 この屋敷の料理全般を受け持っている彼女も立派な職人だった。

 つまり自分の作る料理に誇りを持ち、それに何らかの注文をつけられることを許さない、というタイプってことな。

 何よりもわたしは、この屋敷では新参ものだ。

 そんなわたしに文句を言われればサラさんでなくとも面白くないだろう。

 わたしだってとやかくいって彼女を敵に回したくはなかった。

 だがな。

 これは、口を出さないわけにはいかない。

 ご主人様のために、そして、何よりも自分のために!

 食べ物がまずいということほどテンション下がることはないのだよ。

 人間は、ただの生き物にすぎない。

 生き物は、なんらかの食べ物を口にしなくては生きられない。

 つまり、これは、死活問題なのだ。

 そういうわけでわたしは、清水の舞台からバンジージャンプする覚悟でサラさんに相談をしたのだ。

 そう。

 あくまでも相談をしたわけだった。

 しかし、結果は、最悪のものだった。

 サラさんは、その翌日から姿を消した。

 というか、ジェイムズさんに休暇を申し出たらしい。

 なんでも娘だか息子だかに子供が生まれるとかなんとか。

 いやいやいや。

 子供は、急には生まれないだろうよ。

 そんな突然に休暇を申し込むのか?

 孫どころか、子供すらいない身なのでわからないんだが、そんなことを世間が許すのか?

 と思ったら、ジェイムズさんはあっさりと承諾してしまった。

 どういうこと?

 これでは、しばらくの間、屋敷のみんなの食事を作るものがいなくなるわけじゃね?

 まずくとも一応食事は食事だったわけで、それすらもなくなるとなると当然、屋敷の人々の怒りはわたしに向いた。

 

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