第275話 俺達のチーム医療

「グリッド!」


 押し寄せる公爵に対してラルフはグリッドを発動させた。


 いくつもグリッドが発現すると、公爵を中心に囲む形で行く手を阻んだ。


「こんなもの――」


「水治療法!」


「スカルペル」


 上空に逃げようとした公爵に、俺はスキル【魔力療法】を使い、魔力を移し替えて水治療法を頭上に広げた。


 それと同時にグリッドの隙間をガレインのメスがいくつも出現し埋め尽くした。


 これでどこにも逃げる場所はない。


 しかし、公爵を止めるのは一筋縄には行かない。


「ダークホール」


 公爵は何かの魔法を使うと俺達のスキルを飲み込み始めた。


「闇属性魔法だ」


 ガレインの声に俺達はさらに警戒を強めた。闇属性魔法は全てのものを無とする力。


 そして、相手の精神を操る危険な魔法だ。


 ダークホールに魔力が吸収されるかと思ったが、ふと公爵の顔を見ると彼は焦っていた。


 どうやら飲み込むにも限度があるのだろうか。


 魔力が吸収されてないなら俺達でもどうにかできるはずだ。


「まだまだだ!」


 俺はさらに水治療法を発動させ、全てを包み込むようにイメージすると水治療法は公爵を囲んだ。


 その中を無数のメスが公爵に向かって発射した。


 俺とラルフは絶対逃さないように。


「ガレイン頼むぞ!」


 俺は水治療法を維持できる魔力量だけ残し、あとはガレインに託した。


 やはり最後は医師の出番だからな。


 ガレインは公爵のダークホールが処理できないスピードでさらに追い詰める。


 ハワードとマルヴェインは俺達の元へ来て、カタリーナとセヴィオンは公爵を元に近寄った。


 カタリーナの合図で俺達はスキルの発動を止めた。


 張り詰めた空気はさらに一段と強くなり警戒した。


 スキルを解除したそこには無数のメスに切り付けられた公爵が倒れていた。


 意識はなくどうにか呼吸しているのがやっとようだ。


 ハワードの魔法で縛り上げると、そのまま二人とも貴族街にある施設で預かることとなった。


 どうやら魔力を封じ込める魔道具もあるらしく、逃げ出す心配もないらしい。


「はぁー、もう疲れたわ」


「オラ達なんて治療した後にここに来てるからね」


「しかも、魔力が尽きたのにさらにケントから無理やり魔力を送り込まれているからね」


「やっぱりケントはオーガだよ」


「そうだね」


「お前ら言い過ぎじゃないか?」


「ははは、もう今日は勘弁してね」


 俺達はその場で寝転ぶように空を見上げた。


「お前らがこの国で卵って言われている理由がわからないな。もはやその辺の戦闘職より強いぞ」


「ガレインが最近言っていた"チーム医療"だってやつなんだろうな」


 うん、またあのゴリラが変な勘違いをしているようだ。


 だけど今日という最高の日は忘れてあげよう。


「ケト……やっとお前の希望を叶えたぞ!」


「おせーぞ!」


 俺は天に声をかけるとどこかケトの声が返ってきたような気がした。

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