第254話 ハワードの戦略
俺達は今扉の前で待機している。これからパーティー会場への入場だ。
「おいおい、緊張しすぎだろ!」
「ハワードさんはなんでそんなにリラックスしてるんですか……。ってかそういう服を着ていたらやはり王族だったんだって感じますね」
「俺はいつも通りの服でよかったんだけどな。こいつがちゃんと服を着ろって言うんだよ」
「流石に王族同時が会うのにあの汚い服で行こうとするお主が悪いのじゃ」
「汚いってあれは魔法国でも有名な――」
「そろそろ入場します」
俺達の他にもハワードやカタリーナ、そしてギルド内で見たことある冒険者が数人いた。
ハワードも正装服を着ているため普段のだらしない感じは全くなかった。むしろただのイケてるオヤジでちょっと面白みがない。
「では、そのまま真っ直ぐ国王の前までお願いします」
扉が開くと演奏とともに煌びやかな世界がそこに広がっていた。
「うぉ……すげー」
「ははは、そういうところを見ると子どもって感じだな」
「これは子どもじゃなくても驚きますよ」
簡単に言えば本当にグリム童話とかに出てくる舞踏会のような感じだ。ミィを始め女の子達の目がキラキラと光っている。
俺達はハワードに続き王様がいるところまで歩いた。
王様の隣には二人の女性が座り、その前にはマルヴェイン、セヴィオン、ガレインという階層順で玉座に座っていた。
きっと地位を表す順番なんだろう。
「それでは式典を始めます」
近くにいた宰相が声を出すと辺りは静かになり俺達は頭を下げた。
「この度は魔物の討伐ご苦労だった。皆のもの顔を上げよ」
国王の一言で俺達は顔を上げた。
「この王都を守ってくれて感謝する。各々の勇姿をたたえて褒美を授けよう」
俺の目の前にはガレインが立っていた。
ガレインからは何か袋に入ったものを渡されると俺は礼を伝えた。
「ありがたき幸せです」
ただ、周りはざわついていた。
横目で見るとハワードが報酬を受け取らなかった。
「私はこの国の人間ではないため、民が集めた税を受け取るわけにはいきません」
俺達がもらった報酬は王族からではなく、国庫金から出ているものだと初めて知った。
「ただ国王にお願いがあって参りました」
「言ってみなさい」
「ここで活躍した異世界病院を我が国ベズギット魔法国へ移店させてもらえないでしょうか」
「へっ!?」
ハワードは俺の方を見てニヤリと笑っていた。
「ガレインは知ってた?」
「いや、何か理由があるとは思ってたけど、まさかこんな展開になるとは思ってもいなかったよ」
小声でガレインに確認するがどうやら聞いてはいなかったようだ。
「それはどういう意味で言っているんだ?」
「我々ベズギット魔法国にも卵と呼ばれている存在がいます。この国でいう外れスキルと同等の意味合いを持つものです」
「それがなぜ異世界病院の移店になるんだ?」
「孤児院にいる子ども達やこの場にいるガレイン王子も同様だと伺っております。そのスキルを発動させたのが異世界病院だということはすでに知った事実――」
「少し話が行き過ぎたようだな。その件に関しては後日話し合うことにしよう」
王様はすぐに話を遮ったが、周りの貴族達には聞こえていた。
この国の第三王子がスキルを発動させたということを……。
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