第251話 運命の人
あれから普段と変わらない日常が過ぎ、いつのまにか褒賞を受け取る日が来た。
ラルフはこの日が来るのをどんな気持ちで待っていたのだろうか。
「よし、準備はできたか?」
「出来たよぉー!」
俺に抱きついてきたのはミィだった。
「ねぇ、今日のミィはどう?」
「どうって?」
「むー!」
ミィは怒って先に馬車に乗って行ってしまった。
「はぁー、これが俺の師匠なんか……」
「先生は違うを勉強した方がいいんじゃないのか?」
「ん? どういうことだ?」
声をかけてきたのはリハビリ三人組のマークとエルクだ。
いつのまにか後輩に当たるマークには"師匠"と呼ばれ、作業療法士のエルクには"先生"と呼ばれるようになった。
彼らの中で何かが変わったのだろうか。
「ケント先生だから仕方ないよ」
「おいおい……」
「だって男ばかりの世界で生きてたんだもん」
次々に異世界病院の子ども達は俺に何かを言って馬車に乗っていった。
俺はこいつらに何かしたのだろうか。
「ははは、なんか元気が出たよ」
「おい、ラルフまで何か言うのか?」
「んー、俺が言ったらミィが可哀想だからな」
「ミィが何かあったんか?」
「はぁー」
ラルフもため息をついて馬車に乗って行った。
この間からなぜかラルフは俺といるとため息ばかりついている。
「お前はどう思う?」
「ヒン?」
俺は近くにいるバトルホースに声をかけた。
今日の馬車を引っ張るのは一緒に戦ったバトルホースだ。
あれから何かあるたびにこのバトルホースが俺達を目的地まで送ってくれる。
「なぁ? 俺ってなんか悪いことでもしたのか?」
「ヒヒン?」
「ああ、お前に聞いてもわから――」
「ヒヒヒヒィーン!」
頭の上でガジガジと歯が鳴っていて正直怖い。
俺は知らない間にバトルホースに頭を齧られていた。
「お主よりは馬女心を理解していると言っておるのじゃ」
俺は優しくバトルホースを撫でるとどこか呆れた顔をしていた。
それよりも馬女心とはなんのことだろうか。
「おおお、すまない。それで馬女心ってなんだ?」
「……」
バトルホースは俺の頭上で再び歯を鳴らしていた。
「いや、やめてくれー!」
俺は急いで馬車の中に乗ると待っていたのかみんなこちらを見ていた。
「ケントっていつも楽しそうだな」
「ん? 俺か?」
「ああ、ケントを見てたらなんでもうまくいく気がするよ」
「それはよかったな! じゃあ、出発進行!」
俺の掛け声と共にバトルホースは城に向かって歩き出した。
「ミィ、本当に師匠でいいのか?」
「俺もそう思う。ラルフ先生の方が絶対良いと思うぞ?」
「はぁ……くしょん!」
「ううん、ミィはもう決めているの!」
「そうか」
どこかで俺の噂をしているのだろう。
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