第153話 生誕祭二日目
――生誕祭二日目
生誕祭二日目は王族のパレードが終わってから開催される。
そのため俺は孤児院の子供達とともに王都の中心に来ていた。
「相変わらずここは人が多いな」
「いつもこんな感じなんですか?」
「長年住んでるけど、二日目にある王族のパレードが一番人が集まるんだ。あとは護衛の人数も多く集まるから、迷惑かけないように子ども達に目を離すなよ」
子供達の面倒を見きれないため、フェーズや破滅のトラッセンも引率として呼んでいる。
「おっ、来たぞ」
周囲の歓声とともに王族が天井の空いた馬車に乗っていた。一台目には王様と王妃、二台目には息子である兄弟三人が乗っていた。
「ガレインー!」
どこかガレインを呼ぶ声が多く、その声はどれも冒険者関係だ。
「おい、ガレイン人気だな」
「マルヴェイン兄さんほどではないよ」
「ふん、当たり前だ。俺が長男だからな」
「そう言ってられるのは今のうちですよ?」
「お前にもまだ負けるつもりはないからな」
「今度とっておきの魔法をぶつけてあげますよ」
「ははは、それは楽しみだな」
三人は仲が良く国王も元冒険者のためか、特に長男のマルヴェインは若干脳筋傾向の雰囲気がした。
「あっ、ケントだ! おーい!」
ガレインは俺に気づき手を振っていた。いや、この場で名前を呼びながら手を振るのは恥ずかしいからやめて欲しい。
「ほう、あいつがガレインの言ってたやつか」
「ケントはすごいんですよ。魔法も使えるし、何事にも諦めないのが……マルヴェイン兄さん? セヴィオン兄さん?」
「今度戦ってみようか」
「マルヴェイン兄さん奇遇ですね。魔法がすごいって言われると少し気になります」
なぜか上の兄二人の視線も俺に集まっていた。むしろ見つめるを通り越して睨まれている気がする。
「寒っ!?」
「ケント大丈夫か?」
「あー、風邪ひいたのかな?」
「ははは、今日はきっと昨日より忙しくなるぞ」
そんな話がされているとは俺は何も知らなかった。あの時の寒さは二人の圧によるものだった。
♢
パレードが終わると急いで子ども達とともに孤児院に帰った。
「あれって孤児院だよね?」
「たぶんそうだと思う。オラの目にも人がたくさん見えるよ?」
孤児院の前には長蛇の列が出来ていた。
その中にはネロやフェーズから勧められて来た人や冒険者が並んでいた。
そして遠くから列が気になって見にきた王都内に住む人もその後ろから並んでいる。
「ははは、俺達がたくさん宣伝しておいたからな」
「私のクッキーみんなに取られた」
ネロはクッキーを試食として食べさせたら全て知り合いに奪われたらしい。
「宣伝と引率してくれたお礼ごちそうしますよ」
「えっ? 本当か?」
「ひょっとしてお土産付き?」
そんなにクッキーが食べられなかったことが悔しかったのだろうか。ちゃっかりクッキーまで貰おうとしていた。
「仕方ないですね。また宣伝してきてくださいね!」
「ハイ、イエッサアアアアアー!」
物静かな彼女も甘い物で凶変することを俺は学ぶことができた。
ネロさん……顔が怖……奥の方ではリチアが睨んでいた。
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