第107話 二人の今後

 五人で話しているとエイマーが食堂に入ってきた。


「あら、ケントくん来てたのね」


「エイマーさんこんにちは!」


 俺がエイマーに挨拶しているとウルとラルはエイマーに近づき抱きついた。


「えっ? 急にどうしたの?」


「ねぇ、聞いて! スキルが使えた!」


「本当に?」


 年長者の二人が突然抱きついたことよりもスキルが使えたという発言にエイマーは驚いていた。


「うん! 俺ら外れじゃなかったよ」


「私やっと自分のしたいことをみつけたの!」


「ラルがしたいこと?」


「私今みたいに人の助けになる仕事がしたい。コルトンさんの手伝いをして、少しでもその人らしい生活が出来るように手助けがしたいって思うようになったの」


 それを聞いていたウルも自身の気持ちを話し出した。


「俺もそう思った。スキルの影響かもしれないけど、俺は自分の能力を生かせるところで働きたい」


 二人はスキルが発動できたことをきっかけに後押しされたのか、介護を仕事として続けたいとエイマーに話した。


「そうなのね。コルトンさん達には伝えておくけど仕事として成り立つのかしら……」


 エイマーも本人達の話を聞き介護を続けて貰おうと思ったが、この世界には介護という概念がそもそもないため仕事としては成り立っていない。


 そこが俺としても心配の点だ。俺はなんとかマッサージで生計を立てている。一方ラルフもスキルは使っているが放射線技師の仕事をしていない。


「ケントくんどう思います?」


 働き方については案は出るものの運営については何も知らない。そもそも医師の指示がないとリハビリができないのが現状だった。


「例えばだけどギルドに近い組織でお店を作ってみるのはどうかな?」


 話を聞いていたガレインが提案をした。


「それってどういうこと?」


「いや、ギルドを作るには各国の王達から三名以上の許可がいるから無理だとしても、お店みたいな形であればどこかのギルドに所属しながら出来るのは知ってる?」


 そもそもギルドを開設する仕組みすら俺にはわからない。その辺は知識豊富なガレインの方がどうにかできるだろう。


「えーっと、どういうことだ?」


「基本的に屋台や鍛冶屋などは商業ギルド、治療院は聖教ギルドに所属しているのは知ってるかな?」


 俺は頷いた。以前トライン街のアスクレ治療院で依頼を受けていた時に、アスクレから治療院を開く時の手順は聞いていた。


「聖教ギルドに所属すると少し面倒だから、ケントとラルフも冒険者なら冒険者ギルドかメリルさん?のとこみたいに商業ギルドとして、人を貸し出すという形が合ってると思う。ただ人を貸し出すってなると冒険者とほぼ変わらないからな……」


 聖教ギルドでは教会に対しての高額なお布施が必要になったり、聖国の教えや命令は絶対となる。


 同じ治療の分野でも外れスキルの俺達はそもそも聖教ギルドには入れないだろう。


 そこで提案で出たのは商業ギルドか冒険者ギルドの二択だ。


 その二つは各々の国に属するため運営は各々国の方針で従うことになっている。一方聖教ギルドは聖国に基本的には属する。


 逆に冒険者ギルドは国に属さないため、基本的には冒険者ギルドの決まりに従う独立機関となっている。


 簡単に言えば商業ギルドは国、聖教ギルドは聖国、冒険者ギルドは独立という形だ。


「んー、そもそもそんな簡単に出来るもんなの?」


 ガレインは左右に首を振った。


「商業ギルドであればある程度のお金を出すことでどうにかなると思う。ただ、商業ギルドでは後ろ盾が弱いから、聖教ギルドから因縁をつけられたらやっていけないと思う」


 ガレインも俺達の能力を考慮すると、聖教ギルドと活動内容が被ることに不安感を感じていたようだ。


 そもそも聖教ギルドのように神を祀るために治療行為をするのではないため根本が異なる。


「じゃあ冒険者ギルドってことになるのかな?」


「それが無難だろうね。採取や街の依頼のみを受ける組織もあるからどうにか出来ると思うが……」


「ならその方向性で冒険者ギルドに確認してみるよ」


 俺達が話終えると他の人達は何の話をしているのだろうかという顔をしていた。ほぼほぼ理解出来ていなさそうだ。


 唯一大人のエイマーが少しは理解していそうだが、そもそもギルドの方針や成り立ちを知らないとわからないことだろう。


「とりあえずケントくんに任せれば良いのかな?」


「そうですね。また何かあれば伝えに来ます」


「ありがとう。ウルとラルのことで迷惑ばかりかけているのにね……感謝しきれないわ」


 エイマーは俺に頭を下げるとウルとラルも続けて下げた。


「いやいや、大丈夫ですよ。頭を上げてください。二人の手伝いを出来たなら僕も嬉しいですよ」


 実際に外れスキルだった時ケトのことを思うと、少しでも外れスキルが減って幸せな人が増えればいいなと俺は思っている。


「じゃあ、僕達はこれで――」


「おいおい、目的忘れているぞ!」


 少し居た堪れない気持ちになり帰ろうとするとガレインとラルフに止められた。ケントは本来の目的を忘れていた。


「あっ、そうだ。もしよければ外れスキルって言われてる子達を後で集めてもらってもいいですか?」


「私は助かるわ。ただ、少しでも子ども達が幸せになってくれるなら良いけど、変な期待をもたせたくないのもあるわ」


 二人の件もありエイマーに伝えるとすぐには返事はもらえなかった。


 外れスキルだからこそ発動出来なかった時のことを考えるとさらに子供達を落ち込ませる可能性があった。


「あっ、こういうのはどうですか? 私もスキルについては勉強になりますし」


 ガレインは自身のアイデアをエイマーに話すと納得していた。


「ならそれで確認してみましょうか」


「お願いします」


 俺達は子ども達のスキルを確認するために各々準備をするのだった。


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