第57話 ギルドマスター
ステータス画面を触っていると、冒険者ギルドを豪快に開けて入ってくる男がいた。見た目はスキンヘッドで体格も良く、筋肉で服はパツパツとなっている。
筋骨格標本にしたらわかりやすいほどだ。
ただ気になったのはそこではなく、パステルカラーや黄色、ピンクを使った衣服を着ていた。
「あらー、みんな元気だったかしらー!」
大きな声で挨拶するその声は明らかにキャラが濃い。むしろ濃いを通り越して近づいてはいけないと感じさせるほどだった。
男性はプラナスに近づいた。
「プラナスちゃん元気だったかしら?」
「ギルドマスターはどうでした?」
「もう、何度言ったらわかるのよ。私はマリリンよ! みんなのマリリン――」
「マリリンさん?」
「それよそれ! 今回は外れかしらね。私の王子様はいつ迎えに来てくれるのかしら」
ギルドマスターであるマリリンは、長期休暇を使って王子様を探していたのだ。
「へんな言い方するとまた不敬罪と間違われますよ?」
「そんなもの私の大胸筋で弾き飛ばしてしまえばいいのよ!」
違う意味である雄っぱいを突き出し、胸を強調させていた。確かにその雄っぱいであれば物理的に弾き飛ばせそうだ。
「そういえば、みんなやる気があるわね」
「そのことでマリリンに相談があって……」
プラナスの説明を聞いたマリリンはあたりを威圧しながら見渡した。
俺は遠くから二人を見ていたが、急に目が合ってしまい逸らしてしまった。
「あー、あの子がみんなを虜にするケントキュンね」
なぜかマリリンはこっちへ近づいてきた。目があったのがバレたのだろう。
目の前に来た彼?はとにかく体が大きく、ゴリラの仲間にしか見えてなかった。
マリリンではなくゴリリンの方が合っているだろう。
「あなたがケントキュン……いや王子様で間違いないかしら?」
わざわざ俺の名前を言い直した。
「いや、ケントキュンでも王子様でもないです」
「あらー、ツンケンして可愛いこと。私もケントキュンの虜にしてー!」
それでもマリリンは止まらなかった。俺を引き寄せ、彼の大胸筋にプレスされた。
「むぐむぐ……」
「あらあら、黙るってことはそんなに私のことが好きなのね」
とにかく理不尽だ。全くゴリリンには興味がない。
そのまま話せずにいると、どんどん違う方向で話を進めている。いらない情報だが、どうやらマリリンは俺みたいな細い男性が好みらしい……。
「そういえばプラナスから聞いたわ」
プラナスはギルド職員達の意見をまとめて、にさっき伝えていた。
「むぐむぐ……」
「あなた私の王子様になりたいらしいわね」
俺はおもいっきり叩いたが、マリリンの大胸筋プレスは強かった。本当に潰されてジュースになるんではないかと思うほどだ。
咄嗟に俺は思いついた。マリリンに抱きつけば驚くのだろうと。
背中に手を伸ばし、脇の下に指を入れた。そこには大体の人が痛いという筋硬結が潜んでいるのだ。
「あら? ついにケントキュンが私のおおおお痛ったたたた!」
力いっぱい押すと急な痛みに力が抜けてあた。やっと大胸筋プレスから逃れることができたのだ。
「めちゃくちゃ苦しいじゃないですか!」
「ケントキュンはそんなに私の雄っぱいは嫌いなのかしら?」
つい雄っぱいと言われ顔を赤らめてしまった。欲望はケトの意識に引っ張られるのだ。
確かに思春期は雄っぱいが大好きだ。
若干違うおっぱいなのを元の体の持ち主は気づいていないのだろう。
「あー、ケントキュン可愛い! どんどん治療院でも何でもやってちょうだい!」
「えっ!?」
急なマリリンの発言に驚きだ。
若干ギルドマスターとしての独断と偏見はありそうだが、どうやら冒険者ギルドで簡易治療院が出来る運びとなった。
「それにしても私にダメージを与えれるなんてさすが旦那様。この痛み久々だったわ!」
いつのまにか王子様から旦那様になっていた。俺の中でどこか大事なものを失った気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます