第47話 初依頼

 次の日、ラルフとともに冒険者ギルドに来ている。マルクスは昨日の段階で先に依頼を受け早朝には自宅を出ていた。


「おはようございます」


「二人ともおはよう! 今日の依頼を集めて来たわ」


 数枚見てもどれも募集人数は二人になっているのが特徴だ。


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【F.商店販売の協力者募集】

募集人数:2人

報酬:銀貨5枚

内容:ある程度の知識が有る者や覚えが早い者を優先する。我々の商会が経営している商店の手伝いをして欲しい。

時間:夕方まで


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 基本的にエッセン町と比べて、私的な依頼より商会などからの依頼が9割を占めている。


 そのため、ケントのスキルが活かせるマッサージはなく、仲が良い二人でできる依頼を中心にプラナスは紹介していた。


 その中でプラナスは商会の依頼を勧めてきたのだ。


「多分ラルフくんにとってはキツイと思うわ。だけどここで認められれば少なからず影響が広まると思うの。それぐらい大きい商会だから頑張ってみなさい」


 言われた場所に向かうと温かく迎えてくれた。ただ、ステータスボートを見せるとラルフに対しての態度は変わった。


「ダメだ! 小僧はともかく獣人のお前は帰れ。俺のところの商品を奪われたり、客から文句が来ては困る」


 商会長の言うことは間違えではなかった。ラルフは改めて自身が犯した罪を間近に感じた。


「すみません、僕からもお願いします」


 せっかくの機会を失う訳にもいかないため、商店の店主に頭を下げた。


「一生懸命働きます。迷惑もかけません。 何か迷惑を掛けたらすぐに辞めさせても構わないのでよろしくお願いします」


 俺の姿を見たからなのかラルフも商会長に頭を下げた。店主はどこか困ったような表情で頭をかいている。


「そこの獣人は何かあったらすぐに冒険者ギルドに伝えるからな」


 店主は何度も頼み込むとついに依頼を受けることが出来た。


 働くのは日用品を中心に扱っていたお店だ。


 前世の記憶がある俺は基本的な敬語や商品の説明に問題はなかったが、問題なのはラルフだ。


 元々敬語を話したことがないため、簡単な敬語は使えるが言葉使いは曖昧だった。


 そもそも冒険者で敬語が使える人が少ないことから、そういう意味でも商会の依頼を勧めたのだろう。


 必死に説明を聞いているラルフの姿を見て、店主もラルフを裏方ではなく店に出すことにした。



「いらっしゃいませ。本日は何しに来ましたか?」


 男性が店内で何かを探していたため、ラルフは声をかけた。


「ああ、調理に使うフライパンを探しに来てな」


「フライパンはこちらにあります。付いてきてください」


 ラルフの接客に俺と店主はヒヤヒヤしながら見守っている。


「こちらのフライパンは熱が伝わりやすい素材で出来ています。素早く炒める時に使いやすいと思います」


 商品の説明になると接客は問題なく、店長の説明を一言一句間違えずに伝えていた。


 客はフライパンをレジに持ってくると何か店主に話していた。ラルフもそれを見ており内心はドキドキとしていただろう。


「ありがとうございます! また来てな!」


「ははは、やっぱり君面白いね」


 どうやらラルフに文句を言っていたわけではなかったらしい。


 その後も無事に営業時間を終えた。


「今日は助かったぞ。ラルフが何か仕出かすか分からなかったが商品説明はしっかり出来ていたな」

 

「ありがとうございます!」


 やはり今まで勉強する機会がなかったからなのか、ラルフの吸収スピードは早かった。


「これが依頼達成報告書とついでに明日の依頼も商会長に頼んで依頼を出しておくから、良かったらまた来てくれよ」


 店主に渡された依頼報告書を持ち、冒険者ギルドに戻ると再びプラナスに声をかけた。


 プラナスは依頼報告書を受け取ると笑顔だった。俺も見た時は嬉しいと思った。


 渡された依頼報告書にはこのように書かれていた。


――――――――――――――――――――


【F.商店販売の協力者募集】

募集人数:2人

報酬:銀貨5枚

内容:ある程度の知識が有る者や覚えが早い者を優先する。我々の商会が経営している商店の手伝いをして欲しい。

時間:夕方まで


店主コアトが二人の依頼達成を報告する。尚、この二人は今後も依頼を受けてもらうよう声をかけて頂けると助かる。


――――――――――――――――――――


 俺とラルフとの初めての依頼は無事に終えることができた。

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